スポーツ

日本球界足蹴のペニー選手 我々の心にもペニーがいると識者

 日本球界には、来日したものの難癖つけてすぐに退団、契約金だけふんだくっていった外国人選手がいる。日本球界を単なる「小遣い稼ぎ」の対象としてしか見ていないわけだが、はたしてこれは外国人選手だけの問題だろうか。ノンフィクション・ラーターの神田憲行氏が考察する。

 * * *
 ソフトバンク・ホークスに今季加入したのもつかの間、早くも退団したペニー投手に憤っているファンも多いだろう。怪我なら仕方ないとも思えるが、日本ではまともに登板せず米メジャーと復帰契約も間近とかで、「アメリカに戻れて最高だぜ」と本人がツイッターでコメントするに至っては、人間性を疑わざるを得ない。

「いやでも、ペニーみたいなのはメジャーに復帰してもそんなに活躍できるとは思わないなあ」

 というのは、米メジャー選手代理人関係者。かつてはペニーのように来日したものの難癖つけてすぐに退団、契約金だけふんだくっていった外国人選手がいた。日本球界を単なる「小遣い稼ぎ」の対象としてしか見ていないわけだが、

「いま日本に来るメジャー選手の希望は、日本球界でもう一度野球を勉強し直してメジャーに復帰すること。ペニーのように日本をあからさまに下に見る選手はむしろ少ない」

 彼らがロールモデルとして目指すのが、広島カープからテキサス・レンジャーズに復帰し、今年は開幕投手も務めたコルビー・ルイスだという。

「日本ハムのケッペルや楽天のラズナーのように、日本球界をリスペクトし、新たに野球を学び直そうとする外国人選手も多い。当たり前の話だけど、野球に対して謙虚で好奇心を失わない選手が結局、復帰しても成功するんですよ」

 そんな話をしていて、私が思い出したのは野茂英雄さんだった。野茂さんがデトロイト・タイガース時代に日本のメジャー・ファンとの対談の司会を仰せつかったことがあったのだが、終始温厚な野茂さんが、唯一色をなして反論したときがあった。メジャー・ファンが、

「野茂さんのおかげでメジャー中継が日本で見られるようになり、もう日本のプロ野球なんて見られませんよ」

 と言うと、野茂さんはこう言った。

「たしかにメジャーには世界からトップレベルの選手が集まります。でも日本のプロ野球、アマチュア野球にも、それぞれ見るべきところがあるんです」

 日本人で初めてメジャーで大きな成績を残し、メジャー移籍選手の象徴ともいえる野茂さんから日本球界を肯定する発言が聞けて、私は驚くとともに感激した。

 翻って、日本球界を足蹴にする外国人選手に憤慨する前に、我々自身、日本球界の価値を見損なっていないだろうか、とも考える。そしてそれは野球の話だけだろうか、とも。我々の心の中にも“ペニー”がいる。

関連キーワード

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン