日経平均株価がついに9000円を割った。本格的な梅雨入りを前に、株式市場は早くも“雨天続き”の模様だ。投資情報提供会社「フィスコ」株式アナリストの小中優氏が、株価調整局面長期化の要因についてこう語る。
「フランス大統領選でのオランド氏の勝利、ギリシャ総選挙での連立与党の過半数割れなど、欧州の有権者が揃って財政緊縮策に“NO”を突きつけた格好となり、欧州債務問題の行方が改めて警戒されてきました。
中国の景気減速懸念や米労働市場の低迷の影響による円高を受けて、日経平均は調整基調が継続しています。リスク回避の円高圧力の強まりなど、しばらくは外部環境の不透明感は払拭されにくいかもしれません」
ただ、欧州債務危機から逃避するマネーを日本株が呼び込む余地は大いにある。
そもそも、日本の株価が割安なのは、国内の金融政策の怠慢が背景にある。元ドイツ証券副会長で武者リサーチ代表の武者陵司氏の解説。
「日本株を買い支える外国人投資家が描いているのは、日本の金融政策が欧米と同じように膨張的になり、その結果、円安になりデフレが終わるというシナリオです。しかし、2月の日銀の量的緩和は完全に期待外れで、その後の白川総裁の発言からもチャレンジングな政策転換の意志は見られません。財政赤字も年金赤字もすべての問題の元凶となっているデフレからの脱却こそが、日本株上昇の鍵なのです」
7月の金融政策決定会合で追加の金融緩和策が打ち出されるとの見方は強い。株価上昇のタイミングは日銀の動向次第ともいえるが、武者氏が好材料として挙げるのが、米国経済の完全復活だ。一部には先行きを懸念する識者もいるが、武者氏は一蹴する。
「確かに4月の雇用統計は数字が悪く、市場から失望を呼びましたが、その前が順調すぎた。住宅建設などが前倒しで行なわれていた側面もあります。何よりも米国経済はフェイスブックの上場など新興企業に勢いがあり、企業収益はおしなべて堅調。それが株価を支えることになれば、円高もピークアウトして日本株上昇の要因となるでしょう」
では、株価のリバウンド時期はいつなのか。武者氏はズバリ5月末と予想。そこから上昇を続け、年末には1万2000円まで到達する可能性は十分にあると、強気の姿勢を崩さない。
ならば、欧州危機再燃、米国経済鈍化、日銀政策への失望――という3点セットで調整局面を続けている今こそ、底値を掴む絶好の買い場。このラストチャンスを逃す手はない。
※週刊ポスト2012年5月25日号