石原都知事が尖閣諸島購入を提唱して以来、尖閣諸島の行方に注目が集まっている。もともと尖閣諸島が個人所有になっていることから、浮上した今回の購入話。所有者は一体どんな人物なのか? 作家・山藤章一郎氏がリポートする。
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さいたま市大宮区。3mの高さを越す塀が延々と60m続く。天辺の鉄ヤリが宙を突き刺し、侵入者をふせぐ。張りめぐらした3本の電線と、「高圧電流注意」の警告板が威圧をあたえる。さらに、数m置きに監視カメラ、途中に、刑務所の出入り口に似た鉄扉がある。扉の隙間から、2階建ての家屋敷が覗ける。外も内も、要塞の威容である。塀がとぎれた先の宅の呼び鈴を押した。
「隣り? さあ、付き合いないからね。あんな高い塀つくって、警戒して。町内みんな、なにがあるんだろって思っちゃってんの」
〈尖閣諸島〉の地主であることはみな知っているという。だが、遠い昔から、交流はない。いまから34年前、この家の主は、〈尖閣〉を古賀善次という者の未亡人から譲り受けた。
※週刊ポスト2012年5月25日号