東京都の石原慎太郎知事が尖閣諸島の購入を打ち出した件について、中国が態度を硬化させている。共産党政権内部ではいまどのような議論が行なわれているのか、チャイナ・ウォッチャーで国際教養大学教授のウィリー・ラム氏が解説する。
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北京の中国筋が明らかにしたところによると、中国の外交政策を決定する最高機関「中国共産党中央外事工作指導小組(グループ)」が4月中旬、北京で開かれ、同小組の正規メンバーではない習近平・国家副主席ら3人の軍事委副主席が出席し、尖閣諸島(中国名・釣魚台)問題や南沙、西沙問題など、東シナ海や南シナ海の領土・領海問題で、「軍事的手段も辞さず」との強硬意見が出された。
習副主席以外の軍事委副主席である郭伯雄、徐才厚の両氏は会議で、異口同音に、石原都知事が打ち出した尖閣諸島の購入計画や、オバマ政権が南シナ海の係争地帯付近の島に海兵隊を駐留させる計画に強く反発。「計画が現実のものとなれば、解放軍は軍艦を派遣し、それらの島々を実効支配すべきだ」と語り、軍事的対抗策をとる必要性を強調した。
また郭、徐両副主席は会議で、領土・領海問題について「当面は当該国との共同開発という立場をとり、領有権問題は棚上げする」という1978年当時の最高実力者・トウ小平氏が打ち出した大原則に「当時と現在の情勢は違う」として、次のように主張した。
「われわれは共同開発には反対はしないが、共同開発の相手国はその島々が『中国に属している』という原則を明確に認めなければならない」
つまり、「中国領」であることを前提としたうえでならば、共同開発は認めてもよいが、それ以外の主張は受け付けないという居丈高な内容だ。
さらに会議では、相手国に「中国領」であることを認めさせるためには、周辺海域に軍艦や漁業監視船、資源探査船などの艦船を頻繁に派遣し、相手国を絶えず威嚇することも決定した。これによって、中国は局所的な軍事紛争の勃発は覚悟しており、「いざとなれば、相手国に軍事的教訓を与える」としている。
※SAPIO2012年6月6日号