5月21日、25年ぶりに金環日食が観測される。世紀の天体ショーを前に、アジア初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんの夫である向井万起男氏(慶應義塾大学医学部准教授)が日食の神秘について語る。
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これほどきれいな金環日食、皆既日食が見られるのは太陽系の惑星でも、ただひとつ、地球だけでしょうね。
地球の衛星は月です。太陽の直径は月の約400倍、地球から太陽までの距離は地球から月までの距離の約400倍ある。距離と大きさが非常に絶妙なんです。だから月が太陽の真正面を通る時にドンピシャに覆い隠す。これはまさに“宇宙の奇跡”です。
衛星が1つだけ、というのがまたいいんです。人類はそれが当然と思ってありがたみを感じていないけれど、水星や金星には衛星がありません。火星には2つ。木星には60個以上あるんですよ。
地球ほど条件の揃った惑星はそうないと思います。宇宙広しといえど、人類以外の知的生命体が他の惑星で同じような日食を見られる確率なんて本当に稀でしょう。ゆえにロマンもあるんでしょうね。
萩原朔太郎の詩やかぐや姫など、月をモチーフにした文学作品が多いことも、無縁ではないはず。月が2つあったら、世界の文学も変わっていたに違いないです。
古来、幾多の文明で日食は神の祟りや凶事の予兆と恐れられ、様々に研究されて占術や宗教などにも波及していきました。地球に与えた日食の影響は無視できません。
※週刊ポスト2012年5月25日号