富士山で阪神・淡路大震災に匹敵するM7級の大地震が発生する──。考えたくもない事態は現実となってしまうかもしれない。5月10日、文部科学省が、富士山直下にこれまで知られていなかった活断層が延びている可能性があるとする報告書をまとめた。
活断層は富士山直下の北東から南西にかけて長さ30kmにも及び、M(マグニチュード)7級、震度6もの地震を引き起こす可能性があるという。調査を担当した東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授はいう。
「実は以前から富士山の西側にある富士川河口活断層と東側にある神縄・国府津─松田活断層の間には“どこかに必ず活断層がある”といわれていました。それが今回、初めて見つかったんです。富士山付近は火山灰などの累積物があるため、地下構造が非常にわかりにくく、地震の規模についてはまだ正確な調査には至っていません。ただ、地表付近まで切れ目が存在する断層で地震が起きた場合、その規模は少なくともM7、実際にはM7以上の大地震が起きることになるんです」
佐藤教授らのチームは、この活断層での地震によって、富士山の東側の斜面が崩壊し、大量の土砂がなだれのように崩れ落ちる「岩屑雪崩」などの「山体崩壊」の危険性を呼びかけている。武蔵野学院大学の島村英紀特任教授はその危険性をこう説明する。
「富士山はいままで何度も噴火をくり返し、土砂や火山灰、地表に出たマグマが高く積み重なっているギリギリの状態。現に富士山では、1日に275トンもの落岩が発生しているほどです。そんなところで、もしM7級の地震が発生すれば、大規模な地滑りや山体崩壊が起こる可能性は当然あるでしょう」
およそ10万才といわれている富士山は、これまでも多くの噴火と山体崩壊を繰り返してきて現在の形となった。なかでも最も大規模な山体崩壊となったのが、いまから2900年ほど前に起きた「御殿場岩屑雪崩」だ。そしてそれを引き起こしたのが、今回発見された活断層ではないかともいわれている。
※女性セブン2012年5月31日号