調査チームは見た! 市営地下鉄の駅そば。乗降客立ち入り禁止の扉を開けると、充実した設備の“職員専用フィットネス・クラブ”が現われた……。大阪府市特別顧問を務める制作工房社長・原英史氏が報告する、大阪での「おバカ規制バトル」。市職員による組合活動の“闇”に斬り込む。
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昨年末以来の大阪市役所改革で、大騒ぎになったひとつが、「職員調査」の問題だ。
職員に対し、業務命令方式でアンケート調査を行なったことや、庁内メールのチェックを行なったことに対し、労働組合サイドは「行き過ぎた調査手法」と反発。マスメディアでも取り上げられた。
また、4月2日の「最終報告」に至るまでの調査では、地下鉄の乗務所(駅の上などにある建物)にある職員専用トレーニングルームや、市長選挙運動が市役所ぐるみで行なわれてきた実態なども明らかになった。ここでは、筆者もチームの一員として参加したこの調査について取り上げたい。
調査報告で明らかにされた柱の一つが、「労使間の不健全な関係」だった。大阪市では、数年前にも、“ヤミ専従”などが問題になったことがある。
もともと、労働関係法令では、一定の手続きを経れば、会社や役所の仕事をしないで労働組合の「専従」になることが認められている。もちろんこの場合、専従の給与などは組合側から捻出される。
一方、正規の手続きを取らないで、表向きは「役所の業務に従事」して市から給与をもらいつつ、実態は「勤務時間内に労働組合の業務に専従」というのが、“ヤミ専従”だ。
前々市長の時代、こうした問題にはかなり厳格な対処がなされ、条例改正や労使関係のガイドライン整備が行なわれた。ところが、今回の調査では、それらをかいくぐり、同様のことが繰り返されていることが明らかになったのだ。
例えば、交通局のある組合幹部の乗務は、ひと月あたり「平均2日」しかない。ずさんな勤怠管理などを温床に、“実質ヤミ専従”と呼べる実態が残っていたのである。
また、表向きは「役所の会議室」としながら、裏で「組合にスペースを提供」する、“実質ヤミ便宜供与”もあった。市が税金で建てた庁舎は、役所が市民のために使うべきもの。正式な労使交渉で勝ち取ったわけでもないのに、労使の馴れ合いの中で組合が部屋を“不当占有”することが許されるはずがない。
こうした実態はどう発見されたのか?
調査チーム代表で弁護士でもある野村修也・中央大学法科大学院教授は、ある庁舎で実地調査に入った際、ロビーに掲示されているフロア別配置表を見ていて、「“変な名前の部屋”がある……」と気付いたのだという。
例えば「相談室」といった、使途が判然としない妙な名称の部屋や会議室があった。それらの部屋を見に行ったところ、備品番号のシールが貼られていないソファ、つまり「役所の備品ではない謎のソファ」が置かれているなど、おかしなことが判明。職員に質すと、「実はここは……」というかたちで“実質ヤミ便宜供与”が見つかった。
しかも、こうした“実質ヤミ便宜供与”を役所側は把握しており、整理した文書まで残っていたのだから、あいた口が塞がらない。
さらに、地下鉄の乗務所などでは事務所スペースに職員が数多くのベンチプレスやランニングマシーンを持ち込み、あたかも“職員専用フィットネス・クラブ”のように使われているのが見つかったが、これもその疑いがある。
乗務日数は短くして、余った時間で組合活動や筋トレをしていたということだろうか。
※SAPIO2012年6月6日号