芸能

さだまさし 29歳で抱えた28億円の借金取り戻そうと本執筆

 父との思い出を綴った初の自伝的実名小説『かすてぃら』(小学館)が発売中のさだまさし。デビュー40周年を迎えていま何を思うのか、インタビューした。

 * * *
 4月10日に60歳になりまして、晴れて還暦を迎えることができました。とはいっても、めでたいなんて思いませんよ。「よくぞ60まで生きてきたな」くらいのもんです。親父が遺してくれた借金とか、おかげさまでいろいろありましたから(笑い)。これからの人生は“おつり”だと思っているんです。

 やっぱりねえ……昨年の震災が大きかった。今生きていることの意味、運命の不思議なんてことをね、少なからず考えるようになりましたもん。残りの人生を“おつり”と思えば楽に生きていけるんじゃないかとね。

 40代までは世間体も気にしていたし、若造なんだからって意識があって自分を強く押し出そうという気にはなれませんでした。だから50歳になって、「自分の意見をいっていいんだ」と思えて解放されましたねえ。それでもってこのたび還暦でございます。他人の批判なんてどうでもいいって境地に達しましたね(笑い)。

 還暦の誕生日に『かすてぃら』という本を出しました。話は3年前に亡くなった親父の最後の10日間。親父っていうのがひどい人でしてね。還暦を過ぎた62歳、僕が29歳の時に公開した映画『長江』で28億円借金することになりました。間違えちゃいけないのは、親父が映画を撮ろうといい出してお金を使ったおかげで、僕が借金したということ(笑い)。

 だから、いくらかでも親父のことを書いて取り戻そうと思って書いたわけですが、どれくらい売れたらいいのかと調べたら2000万部。ガックリきました(笑い)。

 親父という人間は、夢だけはデッカイ、山師のような男でした。金に関していえば、あればあるだけ使って自分だけいいカッコするタイプ。僕の財布から湯水のように金を使いまくって、それと知らない他人は、僕に「いやあ、お父さんは素敵な方ですね」なんて笑いかける。そんなこといわれてごらんなさい、腹立ちますよ(笑い)。

 母もずいぶん苦労したと思いますが、実家がいわゆる侠客だったせいか肝が据わっていましたね。底の抜けた「割れ鍋」の親父に「綴じ蓋」の母親――いいコンビだったんですね。

 思えば僕も「割れ鍋」みたいなもんですし、途中で投げ出さずに最後まで精一杯働くっていう一点においては親父にそっくりかもしれません。

 そんな父親を思い返しながら、一気呵成に書き上げたのが『かすてぃら』です。読者の皆様にも家族の誰かを重ねながら読んでいただけると嬉しいですね。

※週刊ポスト2012年5月25日号

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン