「陛下~!」
「美智子さま~!」
天皇皇后両陛下を乗せたお車が到着すると、沿道に詰めかけた大勢の人々から歓声が上がり、手を振る人波が幾重にもできた。
気温は18度まで上がり、眩しい日差しが照りつけるなか、お車から姿を見せられた両陛下は、笑顔を浮かべながら手を振って応えられた。
5月13日、両陛下は宮城県仙台市若林区にある荒井小学校用地応急仮設住宅を訪問された。ここには、津波で大きな被害を受けた若林区荒浜地区の住民を中心に194世帯、381名が暮らしている。
両陛下は出迎えた被災者に歩み寄られ「冬は寒くて大変だったでしょう」、「お体はいかがですか」と声をかけられると、そのあと、若林区長の先導で仮設住宅を回り、被災者を励まされた。
当初、今回の仙台ご訪問は、同日の第14回IACIS国際会議ご臨席のためだったが、直前になって急きょ仮設住宅への慰問も決まったという。
宮内庁の羽毛田信吾長官は、5月10日の定例会見で、陛下が「仙台に行くなら、どうしても被災者を見舞いたい」というご意向を示されたと述べたうえで、「被災者を見舞わずに、お帰りになるという選択肢はなかったのだと思う。それぐらい被災地への思いは深かった」と明かした。
今年2月、冠動脈バイパス手術を受けられた陛下が、手術後、宿泊を伴う地方での公務をなさるのは初めてのこと。宮内庁としては陛下のご体調を鑑みて、今回は行事への出席のみと考えていたようだが、両陛下の強いご意志を尊重し、約1年ぶりの被災者慰問が実現したのだった。
※女性セブン2012年5月31日号