中国共産党の最高指導部入りが有望視されながら重慶市トップや党政治局員を突然、解任された薄熙来氏への「夕刊フジ」の単独インタビュー記事が中国や香港、台湾など中華圏で波紋を広げている。薄氏は中国当局によって厳しい取り調べを受けているはずなのに、日本人ジャーナリストと接触して、「私は復活する」と語ったというもの。
夕刊フジの記事は、国会新聞社の宇田川敬介次長が北京を訪問中の4月26日、北京飯店で3時間にわたって行なわれた単独インタビューの内容を報じたもので、「中国“失脚大物”薄煕来氏を独占インタビュー!初めて明かされる真実」という見出しで5月11日に掲載された。
宇田川氏は薄氏が大連市長時代から親しく、薄氏と夫人の谷開来氏の離婚調停を手伝ったことがあり、中国の国家安全部が薄氏の家族関係を確かめるため、宇田川氏に協力を要請。国家安全部要員の監視のなか、食事をしながら、薄氏と3時間、忌憚のない話し合いをしたという。
この記事によれば、
「最初は昔話で盛り上がり、途中から、薄氏は(殺人の容疑がかけられている)谷容疑者の悪口を言い始めた。調停は成立して10年以上も別居していたが、『子供の問題や出世の妨げになる』として離婚はしていなかった。薄氏は、妻の殺人を否定せず、『離婚しておけばよかった…』と後悔していた」
「薄氏は少しやつれていたが、穏やかな表情だった。共産党内の権力闘争や、自らのスキャンダルの多くを否定していた。会食したのが、民主党の小沢一郎元代表に無罪判決が出た当日(4月26日)だったので、『私は(小沢氏のように)復活する』と語っていた」
「そして、会食が終わると、(薄氏は)『アイ・シャル・リターン』といい、部屋を出ていった」
これについて、日本のメディアではほとんど取り上げなかったが、香港や台湾、さらに米国の中国系報道機関では大きな話題になっている。
米ニューヨークを拠点に信憑性の高い中国の専門情報を配信しているWebサイト「多維新聞網」は中国専門家の話として、「これは、だれかが薄熙来の顔に泥を塗ろうとしている疑いがある」と分析。
一方、共同通信社電によると、淡江大学国際事務戦略研究所の翁明賢所長は、「報道が事実であれば」と仮定した上で、薄氏への対応について共産党上層部の考えに変化が生じているということかもしれないとコメント。
また、中国専門家や中華圏メディアでは、こうした報道が出ること自体、中国共産党が妻の殺人容疑と薄氏を切り離し、薄氏の処分を軽くする可能性がでてきたと分析している。