『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子など、様々な分野の論客が『今週のオピニオン』と題して、毎号書き下ろしの時事批評を寄稿する。5月18日に配信された15号では、櫻井よしこ氏が登場。先日行われた日中韓首脳会談の際の中国側の“非礼”について、櫻井氏はこう語る。
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政府筋によると、野田首相が日中韓首脳会談のために北京を訪れた5月12日、温家宝首相側から少人数による日中2国間会談の申し込みがあった。2国間会談は13日に開かれたが、温首相が語った論点は三つ、ウイグル、尖閣、北朝鮮だった。最初に取り上げたのがウイグル問題で、国際テロリストとして指名手配中の人物を入国させたのは怪しからん、同問題は中国の核心的利益に関わるもので、見過ごせないとの主張を展開したという(※)。
(※5月14日に世界ウイグル会議が国会近くの憲政記念館で開催。ウイグル代表の訪日を認めたことについて、中国大使の程永華氏の名前で、日本側に“警告文書”が送付された。)
対して野田首相は日本と中国は政治体制が異なるのであり、法律上問題がなければ日本政府は特定個人の入国に関知しないことを説明した。自由を尊重する普通の民主主義国においてはごく当然のことである。
だが、異質の国の指導者にはこのことがなかなか理解できない。そこで野田首相は温首相に対して、「日中人権対話」を継続する必要性を強調し、普遍的価値観を尊重すべきだと主張したという。野田首相はきちんと反論したのである。この点はしっかり評価したい。それに対して温首相はこう切り返した。
「(世界ウイグル)会議が日中2国会議の翌日でよかったですね」
日中2国間会議は13日、世界ウイグル会議は14日である。中国政府は、程大使の手紙ですでに警告を発している。その警告を無視して世界ウイグル会議を開催させれば日本は代償を払わなければならないとでも言うかのようなニュアンスにもとれる。
事実、胡錦濤国家主席は韓国の李明博大統領と会談したにも拘らず、野田首相との会談は拒絶した。また、15日に予定されていた経団連会長の米倉弘昌氏と楊潔チ中国外相の会談が14日夜になって急にキャンセルされた。理由は「時間の調整がつかない」ということだったそうだ(『産経新聞』5月16日)。
これら一連のことは、自由や人権、民主主義に中国政府が強い忌避感を抱いていること、彼らがこうした価値観を受け入れることがないことを示している。普遍的価値観を退ける中国共産党政府の異形な姿が際立つばかりだ。
21世紀のこの時代に、人間の自由や民族自決を踏みにじる中国の立場など、国際社会の大半の国々は支持しない。だからこそ、日本は自信と誇りをもって、21世紀のあるべき価値観を果敢に守り続けていけばよいのだ。中東から始まった民主化運動は、さまざまな時間差をもって、必ず、ユーラシアやアジアに浸透していくだろう。その意味で野田首相が挫けずに、日本の主張を貫き、価値観を守り抜くことは歴史の正しい道を歩むことなのである。