不気味な沈黙を守る北朝鮮の核実験が、「いよいよ間近だ」と各国の情報機関が慌て出している。5月14日に発表された日中韓首脳会談の共同宣言に、「北朝鮮」に関する記述がなかったからだ。
共同宣言で日韓が求めていた北朝鮮核実験への強い懸念表明は、中国の執拗な抵抗で削除された。これを、中国が北の核実験を黙認するサインだ、と見るのは日本のある官庁の情報分析担当官僚である。
「中国筋の情報によると、実は4月末に一度、北から中国とロシアに対して核実験を行なう事前連絡があった。その証拠に、4月24日に北京空港から北朝鮮へパキスタン人の科学者が渡航したことが確認されている。
ただしその時点では、中国が反対して中止させた。6か国協議でイニシアチブを取りたい中国は、5月4日に胡錦濤・クリントン会談、さらに13~14日に日中韓首脳会談を控えたタイミングで北が核実験を行なうと、権威の失墜につながると考えた。北との間では相当のつば競り合いがあったようだ」
中国に核実験を止められた金正恩の、その後の言動はおかしい。5月9日までに万景台遊園地を訪れ、「管理ができてない」と従業員に激怒し、生い茂った雑草を自ら引き抜いたという。さらに同日の労働新聞では、「もっとインターネットを使って他国の先端技術に接するべきだ」という異例の声明で党員を叱責している。
中国の抑圧に屈した金正恩の「八つ当たり」なのか。だが、前出の共同宣言によって、いよいよ中国も金正恩の“わがまま核実験”を黙認したようだ。
「共同宣言に北朝鮮の文言があると、北が直後に核実験をした場合に中国の面子が丸つぶれになる。それを外したのは中国が核実験を認めたということ。北は5月中にも核実験を行なう可能性が高いと、各国の情報機関は見ている。事実この間も、北は韓国に対し、GPS(全地球測位システム)を妨害する電波を発するなど、挑発を続けている」(前出・情報分析担当官僚)
※週刊ポスト2012年6月1日号