5月13日、黒田清子さん(元紀宮さま)は、臨時祭主就任の報告のため伊勢神宮に参拝し、さらに翌14日には、神様の衣替えともいわれる「神御衣祭」に出席し、初めての祭典奉仕を行った。国学院大学神道文化学部教授・大原康男氏はこう説明する。
「通常、一般の神社における神職の最高責任者は宮司ですが、伊勢神宮だけは特別に祭主と呼びます。祭主は、神宮の祭祀に奉仕し、天皇のお心を伝えるとともに、伊勢神宮の神職をまとめる役職です。古くは中臣、次いで大中臣の世襲制で、原則的に男性が祭主を務めていましたが、明治以降は皇族や華族が親任されるようになり、戦後は元皇族を含めた女性が祭主を務めることになりました」
戦後、女性として初めて祭主となったのは、明治天皇の皇女、北白川房子さん。その後、昭和天皇の三女・鷹司和子さんが就任したが、1988年から鷹司さんが病気療養生活にはいったため、昭和天皇の四女・池田厚子さんが祭主を務めていた。清子さんが、伊勢神宮臨時祭主に就任した背景には、来年行われる「式年遷宮」という重要な行事が控えていることがある。
「歴史を遡れば、持統天皇時代の690年から1300年以上にわたって続く式年遷宮は、20年に1回、神宮の正殿を新しく建て替え、鎮座される御祭神を移すという大切な行事で、来年はその62回となるわけです」(前出・大原氏)
しかし、現在の祭主である池田さんが、81才と高齢となったため、清子さんが臨時祭主となり、一連の行事が終わるまで、万全を期すべく補佐することになったのだという。
「日本一の旧家である皇室は、神道の総本家でもあるわけで、天皇陛下はかねがね、天皇家の直系の血を引く者に、伊勢神宮の祭主を務めてもらうのがいちばんいいとお考えだそうです。ですから、今回、清子さんがその大役を引き受けることになり、両陛下は大変お喜びでいらっしゃるようです」(宮内庁関係者)
清子さんの就任前、式年遷宮を控え、臨時祭主を誰に委託するかについて、伊勢神宮側と天皇皇后両陛下、そして現祭主の池田厚子さんとの間で、何度も話し合いが行われたという。
「いろいろ名前は挙がったようですが、結局、“清子さんが最適任者”ということで話がまとまったようです。ところが、その結論に至る過程で、紀子さまが(祭主にと)名乗りを挙げられたそうなんです」(皇室関係者)
さらに、こう続ける。
「祭主のことは清子さんにお願いする方向で進んでいたために、紀子さまの“池田さんの後任問題でお困りなら私が!”というお心遣いが、思わぬ形で美智子さまを苦しめる結果となってしまったんです…。もちろん、美智子さまも姑として嫁の心優しいお気持ちは嬉しく思われたはずです。
しかしながら、紀子さまはご公務もありながら、まだ幼稚園に通う悠仁さまの子育てもされなければならないお忙しい身。美智子さまは、まずは未来の天皇となる悠仁さまの教育を大切に考えてほしいと思われているのではないでしょうか。
ただ、そういう状況にもかかわらず、皇室のことを真剣に考え、手を挙げられた紀子さまの気持ちを断るのは心が痛みます。思いもかけない、紀子さまの申し出に美智子さまは大変戸惑われたようです」(前出・皇室関係者)
結局断るしかなく、このことで、美智子さまと紀子さまの間に多少の行き違いがあったとはいえ、これも紀子さまの強い献身的なお気持ちがあってこそのことといえる。
※女性セブン2012年6月7日号