関東3県(千葉、埼玉、群馬)で取水停止となり、千葉県では約35万世帯が2日間も断水する騒ぎとなった。原因は埼玉県、千葉県など利根川・江戸川を水源とする浄水場で相次いで国の基準値(1g当たり0.08mg)を超えるホルムアルデヒドが検出されたことだった。
生体標本の保存液であるホルマリンや建築材などの接着剤や塗料など、私たちの身近なところで利用されているホルムアルデヒド。環境工学が専門の京都大学松井三郎名誉教授がその毒性について説明する。
「ホルムアルデヒドが体内にはいると、細胞内のDNAを傷つけてしまうんです。大量に摂取するとがんの危険性もある強い毒性のある物質です。本来、刺激臭が強いのですが、今回のような低い濃度では無味無臭で、すぐに気づくのは難しいでしょう」
日本の水道水のホルムアルデヒドの基準値は1gあたり0.08mg。今回、最も高濃度のもので1gあたり0.168mgだった。ちなみに、WHO(世界保健機関)が定める基準値は0.9 mgで、これと比べると数段安全なのだが…。
「日本の基準値は70年間、水道水1リットルを飲み続けて、10万人に1人が発がんする可能性があるというレベル。しかし、こうした化学物質には、体質的に過敏な人もいれば、妊婦の場合は受精卵に障害が起こる危険性も否定はできない。検出されたのが、短期間だとか、少ないから大丈夫だとはいい切れません。毒物を減らし、安全な水を供給するのが浄水場なんですから」(前出・松井名誉教授)
※女性セブン2012年6月7日号