『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する。5月25日配信の最新号16号では、経済評論家の森永卓郎氏が登場。日本の株価下落の背景となる日銀の施策に言及した。ここではその一部を紹介する。
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5月18日の日経平均株価は前日よりも265円安い8611円と、4か月ぶりの安値に転落した。メディアが報じるとおり、欧州債務危機の再燃も大きな原因だが、この2か月における日本の株価下落率は、アメリカの2倍に達している。もし欧州債務危機再燃だけが株価下落の原因ならば、日米の下落率は似たようなものになるはずだ。実は、日本の株価下落には、もう一つ大きな原因がある。それは、日銀による金融引き締めだ。
2月14日に日銀が導入した事実上のインフレターゲットにより、金融緩和への期待が膨らみ、8000円台だった日経平均株価は、わずか1か月で1万円台にまで急上昇した。しかし、日銀は本気で金融緩和をする気はなかった。
その第一の証拠は、日銀が4月27日に発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」だ。このレポートは日銀の経済見通しを示すものだが、このなかで、消費者物価指数(生鮮品を除く)の上昇率は、2012年度がプラス0.3%、2013年度がプラス0.7%とされたのだ。1%という物価上昇率の目標を掲げながら、今年度も、来年度も、その達成ができないと日銀は言うのだ。日銀は資金供給の増減によって自由に物価をコントロールできるから、このことは、そもそも1%という物価上昇率目標自体がウソだったということになる。
第二の証拠は、日銀が金融緩和どころか、金融引き締めに舵を切ったことだ。2月に前年同月比11.3%増だったマネタリーベース(現金+日銀当座預金)の伸び率は、3月はマイナス0.2%、4月はマイナス0.3%となっている。
※メルマガNEWSポストセブン16号