今季のプロ野球は極端な「投高打低」。必然的にロースコアの接戦が多くなるため、ひとつの失策や手を抜いた守備が試合の展開を変えることが少なくない。象徴的だったのは5月8日、巨人―横浜戦での捕手・阿部の落球だ。この失策がきっかけで同点に追いつかれている(結果は引き分け)。通算201勝を記録した平松政次氏はこう語る。
「我々が現役の頃も、今と同じ投高打低で、防御率1点台の投手がゴロゴロいた。こうした状況では、守備のミスからガタガタ崩れるケースが多かった」
守備の優劣と聞いて誰もがまず考えるのは「失策」だろう。しかし失策が多いからといって、守備が下手とは言い切れない。それなら、プロ野球史上最も多く失策した選手が、一番下手だということになってしまう。ポジション別の歴代最多失策を見ると、捕手のトップは野村克也氏の271個、一塁手は王貞治氏の165個と、名だたる「名手」ばかりであることがわかる。
失策は重要な要素だが、その数だけで守備の優劣は判断できない。そこで本誌は、MLBの公式記録にも採用されているレンジファクター(RF)という指標に注目した。これは「野手が1試合につきアウトをとるのにどの程度貢献したかを表わす数字」で、「アウト寄与率」とも呼ばれる。守備範囲の広さ、捕球・送球の技術で、同ポジションの選手を相対的に比較する指標である。
※レンジファクター=(刺殺+補殺)÷イニング×9
それでは各ポジション・リーグ別の1位と最下位を見てみよう。当該ポジションで500人以上出場の選手を対象とする。なお、データは2011年度の成績に対応している。
<セ・リーグ>
【一塁】
1位:小笠原道大(巨人)10.63(RF。以下同)
最下位:畠山和洋(ヤクルト)8.71
【二塁】
1位:井端弘和(中日)6.12
最下位:東出輝裕(広島)5.52
【三塁】
1位:森野将彦(中日)2.75
最下位:新井貴浩(阪神)2.33
【遊撃】
1位:坂本勇人(巨人)4.92
最下位:鳥谷敬(阪神)4.43
【左翼】
1位:スレッジ(横浜)1.82
最下位:金本知憲(阪神)1.13
【中堅】
1位:丸佳浩(広島)2.44
最下位:長野久義(巨人)2.02
【右翼】
1位:廣瀬純(広島)2.21
最下位:バレンティン(ヤクルト)1.70
<パ・リーグ>
【一塁】
1位:浅村栄斗(西武)10.49
最下位:カスティーヨ(ロッテ)9.20
【二塁】
1位:内村賢介(楽天)5.81
最下位:井口資仁(ロッテ)4.92
【三塁】
1位:松田宣浩(ソフトバンク)2.75
最下位:バルディリス(オリックス)2.27
【遊撃】
1位:金子誠(日本ハム)4.72
最下位:川崎宗則(ソフトバンク)4.23
【左翼】
1位:伊志嶺翔太(ロッテ)2.47
最下位:中田翔(日本ハム)1.75
【中堅】
1位:岡田幸文(ロッテ)2.58
最下位:栗山巧(西武)1.99
【右翼】
1位:鉄平(楽天)2.07
最下位:多村仁志(ソフトバンク)1.77
※週刊ポスト2012年6月1日号