「ショックです…。こんなことになるなら中高で、もっと勉強しておくべきだったと後悔してます」
「閉校になる大学の学生なんて企業は採ってくれるんでしょうか…。就活がホントに心配です。伝統や名声を守るために大学を切り捨てるなんてひどすぎますよ!」
東京・町田市にある東京女学館大学に通う学生からは、こんな嘆きや憤りの声が聞かれた――。5月1日、同大学は来春の新入生募集を停止して、在学生全員が卒業する2016年3月をもって“閉校”することを発表した。その知らせを聞いて泣き出す学生が現れるほど衝撃的な決定だった。
東京女学館とは、伊藤博文らが「世界の女性と対等に交際できる人材を育成したい」と1888年に設立した120年以上の歴史がある小中高大一貫の名門私立女子校だ。
「体育の授業にフランスの宮廷ダンスが採り入れられるなど、いわゆるお嬢様学校で、規律は厳しいですが、小中高はレベルが高く、制服の白のセーラー服もかわいいため、とても人気があります。男の子からすれば女学館の女の子を連れて歩くのは一種のステータスかもしれません(笑い)」(家庭教育コンサルタント・山本紫苑さん)
著名人では故・夏目雅子さん(享年27、短大中退)や、浅田美代子(56才、高校中退)大石恵(39才、短大卒業)、さらに皇族の東伏見宮妃周子さま(明治時代)らが東京女学館で学び、現在も多くの著名人の子供たちが通っている。
今回、閉校されることになった大学は1956年に設立された短大を前身として、2002年に設立されたばかり。今年度の定員充足率57%が示すとおり、長年定員割れが続き、大学部門の累積赤字が約25億円に膨れあがり、学校法人全体の経営を圧迫したのが原因だった。
5月12日、学校側は保護者や学生らを対象とする説明会を行った。出席者からは「大学存続に向けて、もっと検討すべき」などの反論があがったが、学校側は「結論は変わらない」と一方的な説明に終始したという。
閉校に至った経緯について、教育評論家の石井昌浩氏はこう説明する。
「大学側がしっかりした経営プランを持っていなかったことが最大の要因でしょう。女学館高校から大学に内部進学するのはわずかです。それ以外は、外の大学を受験して出ていってしまう。一貫校において大学が教育の最終段階のステータスを持っていなければ意味がない。女学館大学は、学部が国際教養学部のひとつだけで、正直、形式的に無理矢理エスカレーター式にした感が否めません」
また立地も閉校に大きく影響しているという。
「小中高は東京・広尾という都内でも人気のオシャレな街にあります。でも、大学は町田で都心部から離れているうえに、最寄りの駅からも徒歩で20分近くかかる。これでは受験する生徒が少なくなっても仕方ありません」(前出・石井氏)
※女性セブン2012年6月7日号