長引く不況を受け、外食産業に元気はないものの、好調なのが昼食時(11~13時)の居酒屋利用率である。外食市場調査に強いエヌピーディー・ジャパンによると、居酒屋のこの時間の利用率は5年前と比べて全営業時間帯で唯一、伸びている(2012年3月発表)。使っているのは50歳以上のシニア層だという。
そんなわけで、居酒屋での「昼酌」が流行中だ。団塊世代の大量退職が始まったのが2007年。まだまだ元気な60代を中心に、真っ昼間から飲める店、も増えている。関西には、“飲みニケーション”にピッタリの陽気な居酒屋が多々ある。
大阪市『天山閣ハイハイ横丁』は、約33メートルのロングカウンターが名物。平日昼間は、50~70代の常連がメインで、毎日訪れる強者もちらほらいるそう。10年来通い詰める60代の男性も、そのひとり。
「電車で通うのが日課やねん。昼前には“そろそろ行こか”と、尻がうずく(笑い)。ここから1日が始まるんやな。全然知らん人とでも、このカウンターならすぐ仲良うなるんや。顔なじみは、ぎょうさんおるで」
ちょっとおしゃれなイマドキの店にも足を運んでみたい、という向きにオススメなのが大阪市福島区に昨年オープンした、スペインバル(スペイン風居酒屋)『BANDA』だ。
「この1年で、開店の15時から飲むお客さんが増えましたね。客層は20~60代と幅広く、お客さん同士の距離が近いことがウチの特徴です。いずれは朝から開ける店をやりたいですね」(平野恭誉オーナー)
63歳常連客のひとりは、こんな風にウインクしてみせた。
「ここは隠れ家的な雰囲気もあるし、女性を連れて来やすいしな。店の外にあるカウンターでワインを飲みながら生ハムを食べる。最高ですわ」
いろんな物語が生まれそうである。
※週刊ポスト2012年6月1日号