5月1日、東京・町田市にある東京女学館大学は来春の新入生募集を停止して、在学生全員が卒業する2016年3月をもって“閉校”することを発表した。その知らせを聞いて泣き出す学生が現れるほど衝撃的な決定だった。
今回の件で“東京女学館”という名門ブランドのイメージダウンは避けられないが、これは何も同校だけの問題ではないという。大学事情に詳しい人材コンサルタントの常見陽平氏が説明する。
「名門一貫校や有名大学でも突然、閉校になる可能性は大いにあります。少子化の影響で大学を取り巻く経営環境は急速に悪化していますから。例えば、現在、定員割れしている大学だけでも200校以上もあるんです」
実際、2008年のリーマンショック以降、慶應大学、駒澤大学、南山学園といった有名校でも巨額の財務赤字が発覚している。
また2007年度からは大学入学定員と進学希望者が同じ数になる“大学全入時代”が到来しており、人気のない大学では入学者が集まらず、私立大学の収益力を支える授業料などの学生納付金が減少する一方なのだ。そのため、各校とも、学生数を増やすため試行錯誤をしている。教育評論家の石井昌浩氏はこう説明する。
「生き残るには、他の学校を引き離す差別化が絶対に必要なんです。例えば、外国で活躍した企業のウルトラ戦士とか、異色の経営者といった特色のある有能な教授陣を揃えるといったような」
受験生たちも偏差値だけでなく、大学そのものの将来性を見極める必要がある。前出の常見氏は、受験戦線のまっただ中にいる子供を持つ親に、正しい学校選択の方法を教えてくれた。
「名門校といえど、女学館のように閉校に至るリスクがあるということを認識して、学校選びをしていかなければなりません。そのためには、まず志望校の学校法人の経営状態をできるだけ自分たちで詳しく調べることが必要です。
定員割れしていないか、負債状態がどうか、大学ランキング本などを参考にするのがいいと思います。すべてはわからなくても、ある程度はわかるはずです」
また自分の足を使って調査することも重要だという。
「学校が出しているパンフレットにはいいことしか書いてありませんので、それだけの情報に頼ってはいけません。酷いところだと就職実績を詐称しているところもありますから。
実際に学校に行ってみて、在校生に直接話を聞いてみるのもいいでしょうね。ただここでの注意点は、オープンキャンパスなどを実施してる学校もあると思うんですが、オープンキャンパスに参加している学生は自分の学校が大好きな、やる気マンマンの人が多いので、それだけを鵜呑みにしてはいけませんよ」(常見氏)
これまでの偏差値一辺倒ではなく、不況ということを考えると、授業料や就職率も大学選びの重要な要素といえる。それに加え、大学そのものの財務状況など、大学選びには多角的な目をもつことが必要な時代となった。
※女性セブン2012年6月7日号