エリザベス女王(86才)が即位60周年を迎えたが、英王室が重大な危機を迎えたことがあった。1996年にチャールズ皇太子と離婚したダイアナ元妃が1997年8月、交通事故で亡くなったときのことだ。英国中が深い悲しみに暮れるなか、女王はいつもと変わらぬ日課を続け、哀悼の言葉を公にすることもなかった。英国内での王室人気は下がっていく。
その3か月後、正しく国民の声を読み取ることができなかった反省の言葉を述べた女王。以降、開放的で、庶民的な親しみのある国民のための王室を意識するようになっていった。
女王はまず国民がどんな生活をしているのか自分の目で確かめるため、“庶民の社交場”であるパブやマクドナルドへ向かった。
「パブに行けば、国民の喜怒哀楽に触れ、不平不満といった生の声が聞けると考えたようです。いつもはワインやシャンパン派の女王はビールを口にはしませんでしたが、夫へのお土産としてビールを持ち帰ったんです。一方、マクドナルドは英国でも大人気ですし、子供からお年寄りまで気軽に立ち寄ります。そうした家族の何気ない喜びを直に感じ取りたかったんだと思いますよ」
と話すのは英王室に詳しいジャーナリスト・多賀幹子さん。
それ以外にもタクシーに乗ってみたり、生活保護者の住宅を視察したこともあった。それまで王族は公の場で私的な感情を表さないのが普通だったが、これ以降は感情を表に出すようにして国民との距離を縮めようともした。
また王室は“金がかかりすぎる”という批判も多かったため、節約にも努めた。
「エリザベス女王は“リサイクルクイーン”と呼ばれるほど、洋服、バッグ、靴などを着回しているんです。王室は国民の税金で生活させていただいているという思いを、きちんと示されているのです」(前出・多賀さん・以下「」内同)
他にも女王不在のときには、バッキンガム宮殿の一部を有料公開して税金への依存度を減らした。
「そんな慎ましい生活のなかで、高齢となったいまでも女王は公務の数を減らすことなく地道な努力を続けられているのです」
こうして徐々に国民の信頼を取り戻していった英王室。そしてウイリアム王子とキャサリン妃の結婚によって、再び英王室は国民から祝福を受ける存在となる。
「ウイリアム王子が母・ダイアナ元妃の死を乗り越え、民間出身の妃かつ8年もの長きにわたって愛を育んだ結婚には誰もが喜びました」
そこから英王室の国民からの支持率は85%を超えるのだった。それと同時にウイリアム王子の人気は父・チャールズ皇太子を凌ぐようになっていく。
「2009年12月、ウイリアム王子はホームレス体験をしました。王子はマイナス4℃という極寒の中、橋の下に段ボールを敷いて一晩過ごしたんです。一部からは“一晩で何がわかるか”といった批判はあったものの、“ダイアナ妃は誇りに思っているはず”とか“ホームレスの実態を広く社会に伝えた意味は大きい”といった、彼を称える声のほうが圧倒的に多かったんです」
そして、いまでは80%の国民が“チャールズ皇太子よりウイリアム王子の方が次の王に相応しい”というほどに。
一方、カミラ夫人と再婚したチャールズ皇太子は不人気なのだが、皇太子としての危機感は強いようで、それまで王族が行かなかったような小さな町の公立の小中学校を訪問するなどして国民と触れ合う機会を増やしている。また最近では5月10日に、BBCの天気予報にカミラ夫人とともにサプライズ出演し、国民に近い存在であることをアピールしている。
それ以外にも英王室は、国民に対して“王室”で商売することに寛大で、女王の顔入りマグカップ、皿、エコバッグ、マグネット、お土産品も売り出され、最近ではユーモアを込めて、パッケージにウイリアム王子とキャサリン妃の写真が印刷されたロイヤルコンドームも販売されている。
「テレビなどで英王室をパロディーにしたりすることにも何も文句はいいません。これも“自分たちを利用することで、少しでも国民の生活が、そして心が豊かになるのであれば構わない”というエリザベス女王のお考えからのようです。これは日本では考えられないことですよね」
※女性セブン2012年6月7日号