今年最大のIPO(新規株式公開)として注目されながら、上場後の株価は急落し、世界中の投資家の期待を裏切った感のあるフェイスブック社。上場に際して投資家の目を引くような新たなビジネスモデルの提起はなく、今後の成長性については疑問符を指摘する識者もいる。そこには大きく分けて2つの問題が存在する。
まず1つ目が、「広告収入頼みの収益構造」である。同社の広告収入の割合は85%に上り、残り15%は課金収入(ゲームなどアプリ会社から使用料を得る仕組み)となっている。
楽天投信投資顧問CEOの大島和隆氏の分析だ。
「私もフェイスブックのヘビーユーザーですが、一度も広告を見て購買したことはなく、同社には1円も支払っていません。確かに従来にはないサービスだとは思いますが、絶対的に生活の中で必要な存在にはまだなっていない。
もし課金サービスとなった場合、このまま使い続けるか今はわかりません。何より投資家の視点で見た時に、かつて米ヤフーやアマゾン・ドット・コムを訪問した際に痛感したビジネスモデルに対する驚きが感じられず、今後の収益拡大を考えると、疑問を感じざるを得ません」
そもそもスマートフォンをはじめとする携帯端末の画面ではどうしても広告出稿が限られるという課題がある。実際、上場直前には「フェイスブックへの広告は消費者に与える影響が小さい」といった見方からか、米自動車最大手のGM(ゼネラル・モーターズ)が広告を引き上げる方針を打ち出し、他の広告主への影響も懸念されている。
2つ目が、「プライバシー管理の問題」だ。実名登録が原則である以上、その情報管理については細心の注意が求められるのはいうまでもないが、同社はこれまで数々の失策を犯しているのも事実。過去にユーザー情報の一般公開を強要するようなプライバシー設定の方法を巡って米国連邦取引委員会(FTC)などから提訴され、昨年11月に和解したが、今後20年間はFTCのプライバシー監視の対象となることが決定されるなど、まだまだ管理面での脆弱さが疑われている。
特に欧州では個人情報の管理に敏感で、今年3月にはドイツの地裁が友達検索機能はプライバシー法に抵触するという判決を下した。
「欧州では個人情報の中に“忘れられる権利”があって、自分の個人情報をネット上から削除申請できる権利を巡る議論が進んでいる」
とITジャーナリストの宮脇睦氏が指摘するように、この権利が認められれば、現在フェイスブック上で展開されている過去の情報を時系列で並べた「タイムライン」というサービスが問題視されるかもしれない。
※週刊ポスト2012年6月8日号