中国の大学入試(高考)は6月。受験生たちは今まさにラストスパートを迎えているところだが、過酷な受験戦争を勝ち抜くために、なんと授業中に点滴を打ってまで勉強に励む高校生が続出しているという。中国の内情に詳しい田代尚機氏(TS・チャイナ・リサーチ代表)のレポートだ。
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中国の高校の授業風景はちょっとどころか、かなり変わっている。湖北省のある高校では、天井からは点滴がぶら下がり、まるで病院のようだが、何も生徒たちは病気というわけではない。6月に大学入試を控え、受験シーズンの真っただ中にいる高校3年生が、あまりにも過酷な受験勉強の疲れをとるために点滴を打ちながら授業を受けているのだ。
しかも、その数は1人や2人ではない。1クラス50~60人のうち20人以上の学生が点滴の管を挿して授業に臨んでいるケースもあるという。
きっかけは、数年前に授業を抜けて病院に行って点滴を打つ生徒が現われたことだった。1瓶500ccで打ち終わるまでに30分かかってしまう。しばらくすると、病院に行く時間がもったいないので学校の医務室で打たせてほしいという親が現われた。やがて、点滴を希望する生徒の数がどんどん増えていき、とても医務室では対応しきれなくなり、教室で点滴を打つようになったそうだ。
点滴の中身はアミノ酸で、危篤患者や救急患者など栄養不良の患者のためのもの。医師が事前に安全を確かめたうえで行なっているというが、ある医師はこう指摘している。
「健康な者がアミノ酸を点滴すれば、タンパク質摂取が過多となり、肝臓や腎臓に負担がかかる。百害あって一利なし。しかも点滴には副作用がある。悪寒、発熱、ひどい場合には吐き気などを引き起こす。特に夏場は副作用が大きい」
ところが、学校側は「別に悪いことはない。一種のプラシーボ(偽薬)効果がある。試験前の学生は緊張が極限状態となっている。点滴を打つことで『これで疲れが取れたぞ』という気持ちが湧いてきて、一種の安心感を作り出す」などと医師らの忠告を無視しているという。
ちなみに、点滴は1本10元(約125円)で学校側が用意しているが、実際には40~50元かかるため、足らない分は学校が補填しているという。むしろ補填などするから、打たなければ損だと考える学生も現われて、点滴を打つ学生の数が増えたといった面もあるようだ。
しかも、その負担は国家規定に基づいていると学校側は説明するが、地元の教育庁では「そんな話は聞いたことがない」とも。今後、学校側の費用請求の仕方を巡って問題になる可能性もあるという。