矢継ぎ早に「役人天国」の改革案を打ち出す大阪市の橋下徹・市長。「橋下総理」待望論まで持ち上がるほどだが、そうした橋下人気を、昨年11月の選挙で敗北した平松邦夫・前市長はどう見ているのか。
「橋下氏の言葉が本当かどうか、そろそろ検証が必要な時期に来ていると思います」――そういって平松氏は険しい表情を浮かべた。
「口だけで内容の伴わないことは選挙戦の頃からありました。橋下さんが選挙中に、『平松市長の市民サービスは全部守る』と演説するのを聞いて腰が抜けそうになった覚えがあります。財政難の中で、住民サービスのカットは避けられないのに……。案の定、市長就任後には『維持する』といった無料敬老パスの半額負担を持ち出してきた。
口当たりのいい言葉で橋下氏の催眠術にかかり、覚めた時にしんどい思いをするのは弱い立場に置かれた市民です。
橋下さんは逃げ足が速いし、責任回避がうまい。いつまでたっても具体案の示されない都構想の区割りも、“区長が考えること”と逃げ道を用意しているじゃないですか。これで住民サービスの低下が起きたとして、迷惑を被るのは市民、責任は区長となり、橋下さんは“自分のいうとおりにできない役人が悪い”と言い出すわけです」(平松氏)
こうまくし立てた平松氏は、君が代起立問題で全国的な話題になったMBSの女性記者とのやり取りにも触れた。
「私の古巣だからいうわけではありませんが、困った時に相手を罵ったり、恫喝したりするのは橋下さんの得意技。私にいわせれば、あれは“予定してキレた”としか思えなかった。今後、橋下さんが罵り始めた時には、面白がるのではなく注意して発言内容を聞いてほしい。往々にして、“自分が突っ込まれたらヤバい”という内容だったりしますからね」
※週刊ポスト2012年6月8日号