期待されたIPO(新規株式公開)も、フェイスブックの株価は上場3日で18%下落した。この下落した背景には、同社が抱える2つの問題――広告収入頼みの収益構造に変化がなく、プライバシー管理に問題があることも挙げられる。
加えて、「同社最大のリスク」(市場関係者)とみなされているのが、今年28歳となった若き経営者、ザッカーバーグ氏その人だ。マスコミなどの前にほとんど姿を見せないこともあって、その資質や能力を疑問視する声も根強い。
米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の経営手法に詳しいビジネスコンサルタントの竹内一正氏(オフィス・ケイ代表)は、天才経営者と称される2人をこう比較する。
「ザッカーバーグは同じハーバード大生の知恵などを借りつつも、最後は自分ですべてプログラムを書いてフェイスブックを立ち上げました。一方、ジョブズはスティーブ・ウォズニアックという絶大な信頼を寄せる技術者がパートナーにいたからこそ冷静な経営判断ができ、より大きなビジネスに結びつけることができた。ザッカーバーグの場合、信頼できる創業メンバーが次々と会社を去ってしまい、腹心がいないのが気がかりです」
創業時、資金を提供し、初代CFO(最高財務責任者)として支えたエドゥアルド・サベリン氏は現在、同社とはまったく関係なく、すっかり投資家と化している。今でもフェイスブックの株式を4%保有しており、その時価総額は38億ドルにも上ると見られるが、巨額のキャピタルゲイン課税を免れるために上場直前に米国籍を放棄してシンガポールに移住し批判された。
彼以外にも、技術部門の核となってきた人物などが次々と独立する一方で、急速に従業員数を増やしており、今後は9000人規模まで目指しているとされる。
また、2008年にグーグルの広告モデルを確立したシェリル・サンドバーグ女史をCOO(最高執行責任者)として迎え入れるなど、自分よりも年長者で脇を固めているが、会議嫌いで知られるザッカーバーグがそれだけの巨大組織を舵取りできるのか、疑問は尽きない。
※週刊ポスト2012年6月8日号