企業では新入社員が続々現場に配属される時期だが、近頃の新人には気になる傾向がある。仕事には熱心で意識も高い。ただ、なぜか異様に「上から目線」なのだ。
新入社員研修の講師を務める人材コンサルタントの高崎宏史氏のもとには、企業からそうした若手社員に関する相談が多く寄せられるという。
ある家電メーカーの若手社員は、「これからは、ツイッターやフェイスブックで情報を発信していくべきですよ」と上司に意見しながら、ネットで「ウチはシステム開発が遅れている」とか「部長にいっても全く無視される」といった会社や上司への不平不満ばかりを書き込んでいた。それを目にした消費者から会社にクレームが入り、役員会にも報告が上がったため上司はその社員を呼び出し、注意したという。
ところが彼は、「プライベートで書いているものに会社が口出しするのは公私混同でしょう。そもそも会社側がしっかり管理して、ソーシャルネットワークを有効活用しないからこうなるんじゃないでしょうか」と開き直った。
「新人研修の場でも、上から目線が目につきます。あるとき討議の授業で、集まった様々な意見を発表させようとすると、まとめ役となった理系大学院卒の新入社員は似たような意見を並べただけで結論が何もない。注意すると、『このほうが効率がいいんですよ』と、反論して直そうとしない。悪気はないんでしょうが……」(高崎氏)
ある社の新人研修では、「日教組」を「にっきょうぐみ」と読み上げた新人がいた。上司が「きちんと調べなさい」と忠告したところ、その1分後、彼は上司の机の前に誇らしげに立ち、「調べました」と辞書を開くと、「日教組は日本教職員組合の略称であり……」と、上司に教えるように読み上げたという。
悪気がない、自覚がない、自分が正しいと思ったら絶対に謝らない。これも「上から目線」の特徴だ。若手社員の「上から目線」を分析した『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)の著者で心理学博士の榎本博明・MP人間科学研究所代表はこう指摘する。
「ある飲食店の若手アルバイターは、客に『注文したのはこれじゃない』と指摘されると、『お客様が注文したのはこれです。間違いないように注文していただかないと、こちらも困ります』と断固として謝らなかった。上下関係に慣れていないため、相手が客でも、どちらが正しいかを争ってしまう」
※週刊ポスト2012年6月8日号