暴力団排除条例が全都道府県で施行されるに至ったのは、昨年10月のこと。徹底的な締め付け強化で、これからどうなっていくのか。数多くのヤクザ取材経験を持つフリーライター・鈴木智彦氏は、必ずしもこの条例が機能しているわけではないと警告する。
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全国初の暴排条例が施行された福岡県(2010年4月)だが、目立った効果はあがっていない。それどころか暴力団が最も先鋭化している。
2010年以降、暴力団の関与が濃厚な企業対象の襲撃・脅迫事件は計41件である。その大半が福岡県、なかでも北九州で起きている。検挙はたったの2件で、九州電力会長宅に銃弾が撃ち込まれた事件など、警察は盛んに「工藤会の犯行と見られる」と息巻き、記者クラブ加盟媒体はそれをそのまま報道している。が、犯人が逮捕されない以上、裏が取れない。これ以上のことは誰も言えない。
また九州ではもう6年も派手な抗争事件が続いている。会長人事を巡り、道仁会から分裂した九州誠道会の内部抗争は、これまで佐賀、長崎、熊本の4県で合計41件の暴力事件を数え、一般人1人を含めた死者は12人、負傷者は10人にも上る。喧嘩をすれば潰されるという自己保身論は、ここでは否定されている。
4月6日、福岡市内で県警の署長会議が開催され、菱川雄治・県警本部長は以下のような訓辞をしたと伝えられる。
「福岡は暴力団対策の最前線として全国的にも注目されており、今は正念場だ。検挙、暴排活動、保護対策を徹底して推進していきたい」
それからわずか2日後……福岡市東区の路上で、九州誠道会・上村隆幸幹部が頭部を銃撃され、意識不明のまま病院に搬送された。
福岡で勃発している警察vs暴力団の戦いは、さらに混迷の度を深めるだろう。警察側に失点も多い。締め付けは必ずしも、望ましいとされる結果に結びついていない。
※SAPIO2012年6月6日号