6月6日に迫るAKB総選挙。熱くなる人は熱くなるが、どうでもいい人にはひたすらどうでもいいこの選挙、どうやったら自分の株を上げることが出来るのか。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が、どうでもいい人のAKB総選挙の楽しみ方を提案する。
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もうすぐ「総選挙」があります。内閣総選挙ではなく「第4回AKB選抜総選挙」ってヤツで、開票は6月6日午後5時半から。回を追うごとに盛り上がっていて、今回はフジテレビが特番を組んで午後7時から「開票速報」を生中継するとか。
まあ、ほとんどの大人にとっては、どういう結果になろうが、べつにどうでもいい話です。しかし、せっかく大騒ぎになっている旬の話題なので、もっともらしい見解のひとつも示して、興味の広さや懐の深さを見せつけたいところ。正直に「ケッ、くだらない」と突き放すだけだと、感度の鈍さを逆ギレでごまかしているように見えかねません。
会社で部下や後輩たちが「総選挙が」という話をしていたら、まずは「おっ、野田内閣は、いよいよおしまいか?」と軽くボケましょう。そうやって大人の貫録を示した上で、「わかってるよ、AKBのだろ。16位に入ると、いいことがあるんだよね」と、意外に詳しいところをチラッと見せます。この「16」という数字を、まず覚えてください。
さらに「前田敦子の票がどう流れるかが見ものらしいね」ぐらいのことを言っておけば、「この人、なかなかやるな」と一目置いてもらえます。ただ、勢い余って「商売上手だよな。まんまと乗せられてCDを買いまくって何が楽しいんだ?」とまで言うのは、やや踏み込みすぎ。投票はしないにしてもAKBの総選挙を楽しく話題にしている側は、本質的で耳の痛い批判をする人を見ると即座にバリアを張る習性があります。
投票結果が出たあとで、どういう感想を述べるかも考えておきたいところ。去年は2位だった大島優子が順当にトップになった場合は、ちょっと残念そうに「AKBファンって保守的なんだな。ま、世相を反映しているとも言えるけど」と言っておけば、深い考えがありそうに見えるはず。大島以外がトップに躍り出た場合は「ほぉー、AKBファンもやるじゃない。なかなか頼もしいね」と感心することで、同じ効果が期待できます。
今回は開票の様子が地上波で生中継されるだけに、1位が決まった瞬間の当事者のリアクションやコメントも、大きな話題になるでしょう。細かい分析や突っ込みはファンに任せて、部外者としては「いろいろ突っ込みどころは多いけど、若い女の子たちが一生懸命にやってる姿ってのはいいもんだね」と、冷静さを保ちつつもあたたかさをにじませておくのがオススメ。さらに「政治の世界の総選挙よりも、当人たちはよっぽど真剣で純粋かもね」と言えば、気が利いていて深い見識がある人に見えそうです。
もちろん、オッサンと呼ばれる年代の人でも、“推しメン”がいて本気で総選挙に熱くなっている人も少なくないでしょう。その場合も、悪いことは言わないので、表面上はこうした態度を貫くことをオススメします。秘密を持つ悦びをこっそり味わえるし、オッサンが熱くなって応援している姿は、本人の想像以上に周囲からは痛々しく見えます。