日本が、中国の輸出する国内問題と本格的に向き合わざるを得ない時代が始まりつつある。中国の漁師たちが外国とのトラブル覚悟で遠い海に向かうのは、ヤクザの縄張りのように漁業権が決められ、そこで漁をするのであれば高いみかじめ料を取られるからである。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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5月23日放送の上海の衛星テレビは実に興味深いレポートをニュース番組で報じていた。
その内容は大連を拠点に遠洋に繰り出す中国の漁師たちの実情だ。彼らが漁師を取材対象に選んだ理由は、なぜ彼らが外国とトラブルになることが分かっている海へと向かうのか、その理由を知るためだ。
名指しこそしなかったものの、最近の韓国での中国漁船の振る舞いが外交問題にもなっていることを受けた取材である。このレポートを通じて分かったのは、大連の地元漁師たちがどうして外国とのトラブルを覚悟で遠い海に向かわざるを得ないかの事情だった。
その一つが水産資源の枯渇である。大連の近海は、彼らの証言によれば魚がいなくなっていて、水揚げ量もかつての3分の1程度にまで落ちてしまっているという。これは明らかに乱獲による弊害である。
そしてもう一つの理由が、近海における漁業権の問題だ。近年、漁業権が地元有力者や権力者、成金に買い占められてほとんど地元漁師は魚を取ることができなくなっているというのだ。インタビューに応えた漁師たちは、その権利を侵して漁をして見つかれば、「暴力を振るわれ、罰金を取られる」と答えていたのが印象的であった。
つまりヤクザの縄張りのように漁業権が決められ、そこで漁をするのであれば高いみかじめ料を取られるのである。そのため漁師たちは、どうしても外へ外へと向かわざるを得ないというのだ。
こうして追い詰められた漁師たちが大量に韓国の海に向かってくるのだから、韓国の取締り当局者に犠牲が出るのも避けられなかったわけである。
ただ、このことは中国との間に海の問題を抱える日本も無縁ではない。中国のこうした国内事情がもろに日本の海に輸出されてきて韓国が直面したと同じ激しい攻撃にさらされないも限らないのだ。
その意味では、中国が輸出する国内問題と本格的に向き合わざるを得ない時代が始まりつつあるのかもしれない。