「きんは100シャア、ぎんも100シャア」。そんな名セリフで日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。あれから20年が経ち、ぎんさんの4人の娘たちもいまや平均年齢93才、母親譲りのご長寿だ。きんさんぎんさんの長寿の秘訣は健康的な食事にもあったという。
きんさんぎんさんは、どちらも甲乙つけがたい“お魚大好き人間”だった。ただ、好みがちょっと違った。姉・きんさんの好物は、赤身の魚の刺身とうなぎの蒲焼き。とりわけ、マグロには目がなかった。
一方、妹のぎんさんは、姉とまるで魚の好みが違い、かれい、ひらめ、たいなどの淡白な白身の魚が大好きだった。とりわけ、かれいについては、ちいっとばかりうるさかった。
美根代さん(五女・89才):「母は甘っ辛く煮つけたかれいが大好きでね。だけんど、これが“活けもん(いけすに飼ってある活魚)”じゃないと顔をしかめてね。そいだで、特別に活きのいいのを買ってきたけど、私ら家族は家計を考えて、いっつも冷凍のかれいで我慢したよぉ(笑い)」
そんなぎんさんは、満足な笑顔を浮かべてこういった。
<魚は活けもんに限るにゃあ。新鮮な魚のおかげで、元気もりもりだがね>
では、母親・ぎんさんの魚好きは、4姉妹に伝わっているのだろうか。ところがここでも、長女・年子さんは、野菜についで、魚も不得手だという。他の3姉妹は、母親以上の“お魚大好き人間”だというのに…。
年子さん(長女・98才):「そりゃあ、ちいっとは食べるけど、できることならパスだが…だってにゃあ、あれは骨がいっぺぇあっていかん」
百合子さん(四女・91才):「だけんど、骨がない魚なんてないがね。お店に行っても、切り身の魚は泳いどらんよ(笑い)」
千多代さん(三女・94才):「こん人(年子さん)は、食いものにわがままでいかん。けんど、どうしてこんなに元気なんじゃろ(笑い)」
美根代さん:「魚にはな、なんちゅうたっけ、ほら、DDTじゃない、DHAちゅうんがはいっとって、頭がようなるというだがね」
年子さん:「私は頭がええから、魚は食べんでもええ。これ以上、頭がようなったら、あんたら3人が困るだが(笑い)」
魚に含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、必須脂肪酸のひとつで、脳細胞を形成する重要な役目を果たしている。このDHAが不足すると、脳細胞の膜をつくることができなくなり、脳の機能が衰えたり、細胞が死んでしまう危険性があるといわれる。
ぎんさんの遺体の解剖を担当した病理医で南生協病院(名古屋市)の棚橋千里さんは、魚の効能についてこう話す。 「魚のたんぱく質は良質で、魚の脂には血液を固まりにくくする、つまり血液をさらさらにする効果があるんです。魚の脂に含まれるDHAやEPA(エイコサペンタエン酸)が、善玉コレステロールを血液中に増やすからです。
そしてこの作用が、動脈硬化や血栓を防ぐ役割を果たすわけで、さば、いわし、さんまといった青魚には、とくにDHAが多く含まれていて、善玉コレステロールを高める作用があるということになります」
※女性セブン2012年6月14日号