東京電力は7月1日から家庭向け電気料金の平均10%値上げを決定した。月額電気代6973円の平均モデル家庭では月480円の値上げになる。
東電側の値上げの理由としては1000億円を超える人件費の削減や、修繕費、広告費の見直しなど総額2785億円に達する経営合理化を行い“やれることはすべて、すごく頑張ってやった”けれども、それでも約6000億円不足するので“やむを得ず”値上げします、ということらしい。
そう聞くと、東日本大震災による原発事故後、まるで初めて値上げをするかのような印象を受ける。しかしエネルギー政策に詳しい立命館大学の大島堅一教授が解説する。
「実は、原発事故以来ほぼ毎月のように電気代は増加しているんです。これは毎月変動する燃料価格に応じて電気料金を自動的に調整する『燃料費調整制度』によるもの。知らないままいつのまにか値上がり分を徴収されていたという人もいると思います。値上げするために政府の許可は必要ないので、電力会社の采配ひとつで価格を動かせるわけです」
火力発電の原料となる原油や天然ガスの価格は、国際的な事情で常に変動している。ここ1年間は原油価格が上昇しており、その分が自動的に電気料金に上乗せされてきたのだ。実際、今年4月時点での平均モデル家庭の電気代は、1年前と比べすでに月600円もアップしている。
ほぼ毎月値上げしてきたのであれば、そもそも7月の大幅な値上げは必要ないのではないだろうか? 二重の値上げになるのではないか?
昨年9月、第三者委員会は東電が過去10年間で実際の原価より6186億円もコストを多く見積もり、それを基に電気料金を決めていたと指摘した。しかし、その詳細は不明だった。なぜなら、東電は総括原価方式の具体的データの公表を固く拒んできたからだ。
その一端が明らかになったのは、5月下旬。経産省の電気料金審査専門委員会で、電気代の値上げが妥当か審議されるなかで、再び総括原価方式の問題点が追及されたためだ。
その内容は、家庭にとって許し難いものだった。なんと東電の利益の9割以上が、私たち一般家庭の電気料金によってもたらされていたことがわかったのだ。企業には電気を原価に近いかたちで安売りし、立場の弱い家庭からはむしりとれるだけとる構図。なぜ、そんなことが許されてきたのか。
「企業向け電力は一部が自由化され、新規業者の参入も認められているからです。そこで価格競争が生じるので、企業の電気代は安くしています。一方、家庭向けは電力会社が電力販売を独占しています。家庭は購入先を選べず“いい値”で電力を買わなければなりません」(大島教授)
今回、東電が経済産業省に示した資料によると、企業など大口利用者の料金平均単価が1kWh当たり11円80銭なのに対して、家庭向けは23円34銭。同じ電気なのに、家庭はなんと2倍も高い値段を支払わされてきたのだ。
※女性セブン2012年6月14日号