夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、ご主人(51歳)が都市ガス勤務の奥様(51歳)。ご主人のプロポーズは哲学者ニーチェの言葉でした。
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「ニーチェは『夫婦生活は長い会話である』といった。キミと一緒なら、いつまでも長く話していられる」主人なりの解釈なんでしょうけど、私も「会話のある夫婦」を望んでいました。新婚の頃は、三度の食事も楽しく会話しながら。テレビも「会話の邪魔」と消していました。
それが今は、「テレビが聞こえないじゃないか。うるさいぞ」と、私の話しかけをシャットアウト。主婦って、子供のことや近所のことなど、聞いてもらいたいことがいっぱいあるんですよ。それを呆れ顔で「よく喋れるなあ」ですって。
長い会話はほとんどなくて、物忘れがひどくなったのか、「アレ」の連発。「今夜の夕食は何にします?」「アレがいいな」「アレって何?」「アレだよ。ホラッ、何とか豆腐」。主人が麻婆豆腐好きなのは知ってますが、わざと「高野豆腐?」と聞くと、「その豆腐じゃない!」「豆腐ねぇ、小野道風?」「バカ! それは人間だろ、食えるか!」って、あらっ、結構長い会話になってる。これからはこの方法がいいみたい!
※週刊ポスト2012年6月15日号