これまで政局の度に、閉塞状況打破の突破口として待望されてきた石原新党が、民主・自民の低迷と橋下徹大阪市長の台頭によって、昨年来、再び注目を集めている。「新党として橋下さん(の大阪維新の会)と合流するでしょう」「日本中に火を付けて廻りたい」と語るなど、政界激変の焦点・石原慎太郎都知事にもう一人の主役、橋下市長について聞いた。
――現在の橋下市長をどう見ていますか。
石原:彼は非常に頭がいい。非常に冷静な自己分析をしている。私が評価するのは、他人のいいところを真似ようとする謙虚さがあるところ。例えば、東京都ではディーゼルガス規制や会計制度の改革をやりました。橋下市長はこれを見て、「同じことをする」と言う。「お金を払わなくていいですか?」って聞いてくるから、「新しい会計制度にはお金もかけたけれど、ただで差し上げます」と言って、資料も渡し解説の人も送りました。そんなことは、他の首長ではなかなかできません。不勉強な国会議員にもできないことですな。
――6月には、橋下市長の「維新塾」に講師として出席されるそうですね。
石原:行きます。手垢の付いた議員ではなく、これからの新しい人材を育てないといけませんから。松下政経塾のようなあんな薄っぺらな人材じゃなくてね、これからの国家を支える人材を育成したいと思っている。
――将来的には石原都知事と橋下市長が合流していくこともありますか。
石原:合流するでしょう、きっと。
――そうすれば相当大きなうねりになって、日本の政界、政治システムが変わっていく可能性がありますね。
石原:そうなればいいと思いますがね。
――橋下市長と合流すれば、再び、石原総理待望論が高まるのでは?
石原:まあ、おだてなくていいよ。歳だからそこまで考えていません。ただ私は、日本中に火を付けて廻りたい。今、日本を変えなければだめじゃないですか。放っておいたら大変なことになる。シナの属国になりますよ。
それに私には時間的な制約もあります。尖閣諸島の購入に関しては、政府との賃借契約が切れる来年3月が目処になります。これだけもり上がって来ていることをきちんとやらないとね。それまでは都政に徹したい。東京オリンピックは次のしっかりした知事にやってもらえればいいが。
とにかくこのままじゃ、国が危ない。だから、私はたどたどしくやっているだけです。
――それでは橋下総理はありますか。
石原:しかしまず、大阪市の病理を完治させることが先でしょう。退治は命懸けの仕事だから、すぐに国政に出るわけにはいかないだろうし、彼はにわかには出られないと思う。
――現在はそうだとしても、橋下総理、将来的には、ありますか?
石原:あるでしょう、それは。大事なことは皆でリーダーを育てていくことです。ただ、彼が大成していくためにも、まず大阪市を立て直すことが肝要です。
それは大阪のためであり、この国のためです。東京と大阪は、やはり日本の両輪なんです。片方だけ元気よく回っていても埒が明かない。だからこそ、橋下市長には頑張ってもらいたい。
※SAPIO2012年6月27日号