2010年4月の公演を最後に閉館し、来年春に完成を予定する東京・銀座の歌舞伎座の建て替え工事が急ピッチで進んでいる。歌舞伎座の象徴ともいうべき瓦屋根もお目見えし、かつて日本の歌舞伎が世界に先駆けて導入したことで知られる廻り舞台も今月中に設置される予定だ。
劇場部分は伝統的な瓦屋根や唐破風の外観を残した4階建てとなる。背後には地下4階、地上29階、銀座では最大級のワンフロア500坪という145mの高層オフィスビルがそびえ立つ。
「歌舞伎座の建築美を生かすために高層ビルの位置を35m後方に配置するとともに、日本建築の桃山様式と調和するように工夫しました。劇場内は伝統を踏襲し、役者の肉声が観客に届くように収容人数も従来と同じ2000人規模です。劇場の屋上には和風の庭園を造り、無料で開放する予定です」(松竹・歌舞伎座開発推進室・野間一平室長)
1889年に開場した初代歌舞伎座は、当時最新技術だった電灯を採用。1911年に純日本式の宮殿風に改装されたのち21年に漏電で全焼、3代目も45年の空襲で大半を焼失した。50年、名匠・吉田五十八の設計で、焼け残った躯体を再利用して物資の乏しい時期に復興した4代目は半世紀以上にわたり銀座の名所として親しまれてきた。
「連綿と続く歌舞伎座の伝統を重んじながら、バリアフリー化に取り組みました。エレベーターの設置やトイレの増設のほか、客席での個別字幕による解説対応など、最新技術を取り入れています」(前出・野間氏)
完成は来春。銀座の新名所がまた一つ増える。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2012年6月15日号