東日本大震災の被災地、福島県二本松市にある東和小学校の体育館にあつらえられたのは、半径約10mの円形の舞台と4本の花道。その周りを取り囲むように子供たちが座っている。集まったのは東和小や近隣の小学校に通う子供たち、そして原発事故の影響で二本松に避難を余儀なくされた浪江小学校の児童たちだ。
手を伸ばせばセットや俳優に手が触れられるほどの距離で、俳優の息づかいを感じながら、時に歓声が、時に笑い声が体育館に響く。
「友達のよさがわかって感動した」「動きがすごくてかっこよかった」と子供たちが興奮気味に話すのは、劇団四季のミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』についての感想だ。
作品の舞台は東北。天災のため現世で生きることが叶わなかった座敷わらしたちと、いじめに苦しむ東京からの転校生・ユタとの心の交流を描く四季オリジナルのミュージカルだ。
昨夏、劇団四季は被災地の岩手、宮城、福島各地を回り、同舞台を上演。被災した子供たちを中心に計1万3191名を招待した。その活動は現在も続き、今年5月7日~25日にかけて、昨年訪れることができなかった被災地を中心に特別公演を実施、8027人が招かれた。冒頭の様子は、5月23日に行われた公演でのひとコマだ。
プロジェクトでは、ミュージカル上演のほかに子供たちとの交流会も行われている。
取材に訪れた日も浪江小学校の子供たち29人との交流会が行われていた。俳優たちと子供たちが一緒にストレッチをしたり、歌ったり。その最後には子供たちから『明日に向かって』という歌のサプライズプレゼントが。一所懸命なその歌声に菊池をはじめ参加した俳優たちは、みな目頭を熱くしていた。
※女性セブン2012年6月14日号