女性は「愛人にならない?」と誘われたとき、どういう反応を見せるのか? 新刊『女子のお値段』(小学館)を上梓したばかりの漫画家・さかもと未明氏は、かつて自身が愛人にならないか、と誘われたときのことをこう述懐する。
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「月、200万でどう?」
私はちょうどバブルのときに、水商売のお仕事をしていました。夜のお仕事の場合は、お客さんからチップがもらえることがあります。今では信じられないかもしれませんが、お給料が一晩1万円であっても、チップが5万円や10万円になることもありました。ときには高価なプレゼントをいただいたこともありました。
よくしてくれるお客さんとは、お礼の気持ちも込めて、一緒に食事にでかけることがあります。そこで、「月、200万でどう?」だったのです。
お一人様ウン万円もするレストランや料亭で、このようなお誘いを何度か頂戴いたしました。月に200万円お小遣いをあげるから、俺の愛人になれというお誘いです。200万円といえば、当時私の漫画の原稿が1ページ1万2000円でしたから、166ページ分。166ページを1か月で仕上げるには、ほとんど毎日徹夜しないといけません。
私の年商は当時2000万円を超えていましたが、そのほとんどが経費で消えてしまっていました。遊ぶ時間どころか寝る時間もなく、夜のお仕事をするのは、原稿料で支払いきれないアシスタント代を稼ぐためでした。だからそんな金額を提示されることに、心底驚きました。
「月200万」は正直、魅力的な金額でしたが、どう頑張っても愛人にはなれません。
「お気遣いは嬉しいんですけど」と、丁重にお断りをいたしました。私はそういう関係でなく、普通に交友関係を持ちたかったのですが、一度お断りをすると、どの方とも連絡が途絶えてしまいました。「人と人としてのお付き合いでなく、女の肉体を値踏みされたんだな」と、淋しい思いが心に溜まりました。
※さかもと未明/著『女子のお値段』より