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懸賞金目当てに情報殺到 警察関係者「情報は金で買う時代」

 逮捕されたオウム真理教元幹部・菊地直子容疑者に続き、逃走17年の後の「素顔」が明らかになった高橋克也容疑者。居住地だった神奈川県川崎市を中心に、警察には市民からの目撃情報が殺到した。その原動力となったのは、1000万円の懸賞金だった。

「懸賞金の効果はすごいです。うちの場合、懸賞金を付けた途端、情報提供は急増しましたからねぇ」

 徳島県警徳島東署刑事一課長の秋山博康警部が証言する。

 犯人に語りかけるような「おい、小池!」のポスター。そして、父子が殺害された後、遺体が焼かれたという残虐性からメディアで報じられることも多かった徳島・淡路父子放火殺人事件は、一昨年の11月に300万円の公的懸賞金の対象となった。

「昨年は1000件の情報提供があった。皆さまが眼を光らせれば必ず事件は動く。動機が懸賞金目当てでもいいんです」(秋山警部)

 極悪人の顔の下に値段が書き込まれ〈WANTED〉(お尋ねもの)の文字。西部劇でお馴染みの絵だが、日本での懸賞金制度の歴史は浅い。

 国内で最初に懸賞金をかけて情報を求めた事件は今から23年前の坂本堤弁護士一家殺害事件だ。この時は全国の弁護士の有志が支援団体を結成し、総額2000万円で情報提供を呼びかけた。

「思うように捜査解決には結びつかず、『警察捜査に協力するのは市民の義務。かえって嫌悪感を抱く』といった声が囁かれた」(大手紙社会部デスク)

 国民の間で広く知られるようになったのは1982年に発生した松山市のホステス殺害事件がきっかけだ。整形手術を重ね、行方をくらました犯人・福田和子の捜査に業を煮やした愛媛県警が1996年、警察協力団体と協力して100万円の懸賞金を発表。時効直前の1997年、犯人逮捕の決定的情報が市民から寄せられ福田和子が電撃的に逮捕された。

「当事者以外の人はすぐに事件を忘れてしまうんです。懸賞金をかけてようやく世間に注目されましたね」

 そう語るのは10年程前に関西地方で30歳男性が刺殺された事件の被害者遺族だ。逮捕に至らぬまま1年過ぎ、数百万円の懸賞金をかけた。続けて遺族の声。

「知り合いだって事情聴取を嫌う人もいる。謝礼金を出した方がお互いに楽。その方が割り切って話してくれる人も出てきます」

 こうした要望をうけ2007年4月1日、警察庁は公的懸賞金「捜査特別報奨金制度」を導入した。それまでの遺族や支援団体が賄う私的懸賞金ではない。国民の税金を原資にした懸賞金を、警察当局が設けることに踏み切ったのだ。

 警察庁関係者はこう言う。

「世の中は変わった。この御時世、警察だって情報は金で買う時代なんですよ」

※週刊ポスト2012年6月22日号

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