4人に1人が生活保護受給者という大阪市西成区――この土地で支援活動を行っているNPO関係者によると、生活保護受給者は親族からの援助がない人が圧倒的に多いという。
「親族にお金のことを頼みにいく時に、シラフでは行けないので一杯ひっかけて行く。そこで、親族から『融通できるお金はない』といわれて、ケンカして暴れてくる。そんなことが重なって、親族と疎遠になっている人もいます」(NPO関係者)
なかには、お盆などに実家に帰ろうとしても、“泊まりは困る”と突っぱねられてしまう人もいるそうだ。
「関係性が希薄で、しかも過去に嫌な思いをさせられたりしていたら、援助はしてくれないと思います。大阪市から“援助をお願いできませんか”という扶養照会の手紙を受けて、訪ねてこられる親族のかたもいます。“どうしても援助しなければいけませんか?”と困惑した表情でしたね」(前出・NPO関係者)
さらに、いまは家族問題が複雑化し、扶養が難しくなっている面もある。日本女子大学人間社会学部教授の岩田正美さんが指摘する。
「夫婦関係が悪くなり、DVから逃れるために家を出て、生活保護を受けるケースもあります。この場合、離婚していなくても、母子を保護する観点から扶養照会は慎重にならざるを得ません。親子間でも若いときに家を追い出されたとか、きょうだいの間でトラブルを抱えていることもある」
経済面のみならず、その親子の関係が扶養義務を課すべきようなものかどうか……ここでも“線引き”はかなり難しいようだ。
厚労省が2007年度に扶養義務の履行状況を数十の自治体に調査したところ、生活保護受給者に対し、扶養照会時に答えた通りの扶養の義務を果たしている人は、全体の3%に満たなかったという。
※女性セブン2012年6月14日号