オウム真理教事件では日本全国に指名手配ポスターが張り巡らされ、常時、特別捜査班が稼働するなど犯罪史上稀に見る捜査網が敷かれていた。それでも、菊地直子容疑者らオウム手配犯たちは、17年もの間、警察の「目」から逃れ続けた。長きの逃亡は警察の捜査能力の低下を意味するのか。
昨年の凶悪犯検挙率は75.5%。凶悪犯4人に1人は検挙に至らず逃亡しているという計算だ。こうした現状に対し、ジャーナリスト・大谷昭宏氏は厳しい。
「現場刑事の捜査が四種の神器――防犯カメラ、Nシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)、携帯電話、カーナビ走行記録などに頼り過ぎている。これら証拠品を解析することは捜査に非常に効果的。でも過信しすぎると四種の神器の範疇から逃れた犯人を扱えない」
凶悪犯はあなたの隣に潜んでいるかもしれないということだ。2007年、英国人女性リンゼイさんを殺害後、北は青森、南は沖縄まで2年7か月逃亡した市橋達也受刑者の主な移動手段は「鉄道」だった。警視庁関係者はいう。
「全国約6万台の防犯カメラが駅には設置されていますが録画映像をいつまで保存するかは各社の運用に任せている。当局との連携もない。仮に犯人が映っていても気付く人員がいない」
逃亡時の服装にも特徴があるようだ。今度は別のベテラン捜査関係者が語った。
「変装の定番、帽子、サングラスなどは逆に目立つ。ただし、今回の菊地容疑者もそうだが普通の眼鏡はつける傾向があるね。目の印象を変えるとガラっと顔の印象が変わるから。同様に眉毛カットも有効です」
夜間は捜査員が最も警戒する時間帯――だが、盲点はあるようだ。
「マラソンランナーですね。一番職質しづらいです。犯人がジョギングスタイルでいたら見逃してしまう」
※週刊ポスト2012年6月22日号