日経平均株価は6月4日、今年の最安値を記録し、東証1部全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も約28年半ぶりにバブル崩壊後の最安値を更新するという惨状だ。しかし、このような相場状況でも投資チャンスがなくなったわけではない。逆に大きな買いチャンスを迎えている銘柄は日に日に増えている。
それは当たり前で、投資で儲ける大原則は「安く仕込んで、高く売る」こと。ただ、歴史的な低水準にある株投資に魅力があることはわかっていても、「どの株が大底か」を見極めることは難しいから「買い」に二の足を踏んでしまうのだ。
週刊ポストは「半値八掛け二割引」銘柄に注目した。半値八掛け二割引とは、相場の値下がり局面において下値のメドとして使われる言葉だ。例えば、株価が高値1万円をつけて下落に転じた場合、その半値で5000円、その八掛けで4000円、さらにその二割引の3200円(つまり高値の32%)まで下がれば、もうそれ以上に下がる余地は少なく、下降トレンドが上昇トレンドに切り変わる目安になるとされる。金融マーケットに関わってきた相場師たちが経験則をもとに編み出した「相場格言」である。
相場の経験則を重視した波動理論を用いて市場を予測する、国際金融コンサルタントの菅下清廣氏がいう。
「株式市場を動かす材料は日銀や各国中央銀行の金融政策、ユーロ危機、超円高、アメリカの各種経済統計など、数え切れないほど存在します。しかも、今後も新しい要素が次々に現われるわけで、そのすべてを分析して市場の未来を予測することは不可能に近い。そこで重視すべきなのがあらゆる相場に存在するサイクル、波動です。過去の値動きが一定の期間で繰り返す原則のことですが、それを端的に言い表わしたものが相場格言なのです。
金融のプロは、サイクルやそれを凝縮した格言を投資の判断基準にすることが多く、それは大きな投資マネーが動くことを意味し、個人投資家もそれと同じ投資行動をすればおのずと投資で勝てる確率も高くなる。いまのような波乱含みの相場展開では、投資格言に従った投資法が特に有効です」
長期的にみれば、日本株は稀に見る底値圏にあり、特に大企業の株価が大バーゲンセール状態だ。そうした銘柄を中長期で仕込み、反転上昇を待てば、もし元値に戻っただけでも資産は3倍に膨れ上がる。
そんな“絶対大底株”が現在の株式市場にはゴロゴロ転がっている。2008年9月のリーマン・ショック後の最高値を基準にしてもなお「半値八掛け二割引」水準に下がっているものも多い。
週刊ポストはリーマン後最高値を100%と見た時に32%周辺の水準まで株価を下げている銘柄をスクリーニングした。さらに株価の変動が大きい中小株を除外して安定性の高い大企業を選ぶために、時価総額が100億円以上の銘柄に絞った。
個人投資家向けに投資情報を提供する「カブ知恵」代表の藤井英敏氏は、そのなかからりそなホールディングス(東1・8308)と商船三井(東1・9104)、メイコー(JQS・6787)を推す。
「ユーロ危機の影響を受けて日本の金融セクターの株価は軒並み下落しています。だが、メガバンクと違って海外業務にほとんど手を出していないりそなはダメージが少ない。連れ安して株価は低水準となっていますが、危機が解消に向かえば、他の銘柄より反転上昇は早いと思われます。
商船三井の株安の原因は新興国の経済低迷で海運需要が鈍化したことだと考えられますが、これも回復基調が確認されれば真っ先に上がる可能性が高い。原発事故を受けての資源エネルギー輸入需要の高まりも後押しするはずです。
また、メイコーはスマートフォンや自動車向け電子回路基板を手掛けるメーカーで、時流のビジネスを展開しているので見直し買いが入ると見ています」(藤井氏)
※週刊ポスト2012年6月22日号