橋下徹・大阪市長が旗を振る「入れ墨検査」で揺れる大阪市に、意外なところから「ちょっと待て」の声がかかった。
〈大阪市で行われた全職員を対象としたタトゥー(入れ墨)調査を、私は疑問に感じている。〉
こう書いたのは、毎日新聞の杣谷健太記者。5月31日付の茨城版コラム「がんばっペン」で、「多様性こそ社会」と題し、「タトゥーは少数派で嫌悪感を抱く人がいることはわかるが、レッテルを貼って管理する必要があるのか」などと疑義を呈している。
だが、内容より話題となったのは次の一節だった。
〈私は米国留学中にタトゥーを入れた。もちろん今も体にある。(中略)タトゥーを彫ったことを後悔したことはない。〉
まさかのカミングアウト。いったいこの杣谷記者はどういう人物なのか。
「物腰柔らかだけど風貌は一風変わっていて、ソバージュのかかった長髪に口ヒゲ、ノーネクタイでスーツのズボンを腰パン状態ではいている。原発問題に関する記事を熱心に書いていた」(地元記者)
評判を聞くに、なかなか硬骨漢のよう。ここは改めて「橋下批判」をぶってもらおうと本人を直撃したのだが……。
「私が会社の人間じゃなければお話しさせてもらいたいとは思うのですが……、今回は東京本社に聞いてもらえますか」
――答えられない?
「会社員なので……」
と、拍子抜けのお返事。この理由を前出の地元記者が推測する。
「茨城ではそこまで話題にならなかったが、東京の記者仲間から問い合わせが殺到し、大騒ぎになってしまったようだ。地方版の記事は、基本的には支局のデスクに任されている。本社からかなり絞られたんじゃないでしょうか」
毎日新聞社東京本社はこう説明する。
「執筆した記者のタトゥーについては入社前の健康診断で判明し、入社までに消すことを指導しました。本人もそれを了承し、通院し、消す治療を受けましたが、完全に消すことができないまま入社しました。
入社後は、人目に触れないようにしていました。毎日新聞社は、社員に社会人としてふさわしい行動を求めており、今回の記事が掲載された経緯などについて調査しています」(社長室広報担当)
ところで杣谷記者のタトゥーはどのような柄だったのか。見せてくれるよう本人にお願いしてみたが、「それは難しいですね」と、こちらもやんわりと拒否された。
※週刊ポスト2012年6月22日号