パナソニックが本社の従業員7000人のうち、3000~4000人を削減すると伝えられた。ソニーやNEC、野村HDといった企業でも大規模なリストラが進行中だ。
人員削減はおおむね全体の削減数に従って部門ごとに削減数のノルマが課され、年齢、給与、能力などの要素を総合的に考慮してリストラ対象がリストアップされ、部門長などによる面談を経てリストラが宣告される――これが、リストラの原則だ。
実は、リストラ対象のリストは、人員削減計画が立てられてから初めて作成されるのではなく、普段から作られている。企業の人事問題に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
「大手企業で最も一般的に導入されているのが、S、A、B、C、Dの5段階に分けて評価するシステムで、リストラの対象を選ぶ際にもこの人事評価がもとになります。人事の用語でローパフォーマーリスト(LPリスト)とも呼ばれています。一般的に言って、Dランクの人だけでなく、Cランクの人でも2回その評価が続くとリストラの対象になり、『うちの会社で評価が上がる可能性は低いので、別の道に活路を見出したらどうか』などと言って暗に退職を促す場合もある。また、ある金融業ではBマイナス以下は全員――全社員のおよそ8割がリストラの対象になっている所もあります」
大手企業の人事マンもこう明かす。
「人事は常に5段階評価をもとに社員の序列をつけ、コンピュータで管理しているので、いつでも自動的に下から何番目までといったリストを出すことができます。パナソニックのように7000人中3500人をリストラするとしたら、おそらく、少し余裕を持たせて下から3700番目ぐらいまでのリストを各部門長に開示し、そこから先は部門長の裁量に任せます」
部門長の裁量に任されるとすれば、そこには情の入る余地があり、リストラ対象から外してもらったり、リストラの時期を遅らせてもらったりすることができるのではないだろうか……と期待しがちだが、今の時代、それは甘いようだ。
経済ジャーナリスト・福田俊之氏が解説する。
「昔のように社員を家族と捉える日本型経営の場合ならば、そういうこともあり得ましたが、経営環境の厳しくなった近年はそういうことはなくなりました。特に外資が入ると、ドライに、システマティックにリストラが行なわれ、そこに情が入る余地はほとんどありません。逆に、リストラを断行するために外資と組んだり、しがらみのない社外の人材を社長に据えたりするケースが増えています」
※週刊ポスト2012年6月22日号