6月10日の白昼、大阪・ミナミの繁華街で起きた通り魔事件。たまたま犯人の目の前にいたという理由だけで南野信吾さん(享年42)と佐々木トシさん(享年66)の2人が殺された。
この事件で逮捕されたのは、礒飛京三容疑者(36才)。栃木県那須塩原市出身で、父が材木店を経営する裕福な家庭の3人きょうだいの末っ子として生まれたという。
だが、小学校の時に母親が病死し、父親が経営する材木店が廃業となると、礒飛容疑者の人生は暗転する。中学時代から荒れ始め、高校には進学せず、暴走族のメンバーに。やがて薬物などに手を染めるようになった。その後、覚せい剤取締法違反で逮捕され、新潟刑務所に収監されていた。
法務省の犯罪白書によると、再犯者率は1997年以降、上昇を続けており、2010年の再犯者率は42.7%にのぼるという。更生したはずの人間が、なぜ再び罪を犯してしまうのか。元保護観察官で福島大学大学院人間発達文化研究科の生島浩教授がいう。
「刑期の途中で出てくる仮釈放の場合、保護観察がつき、住むところや仕事の斡旋などの立ち直り支援があるんですが、刑期満了で出てきた場合、こういったアフターケアがないんです。刑務所内では、専門家がカウンセリングをするなどの更生プログラムがありますが、そこでの結果はどうであれ、刑期が満了になれば、刑務所を出られてしまうんです。礒飛容疑者も刑期満了でした。結果として保護観察がつく仮釈放とすべきでした」
“仮釈放”とは、刑期満了前に釈放される制度。法務省の地方更生保護委員会が、“更生の意欲があるか”“再犯の恐れがないか”などを基準に判断する。つまり、模範囚であれば早く出所して支援を受けながら、社会復帰に励むことができるのだ。
礒飛容疑者は出所後、栃木県内の薬物依存者の民間リハビリ施設にはいり、更生をはかりながら、清掃のアルバイトをしていた。しかし結局、定職は見つからず、1~2週間足らずで自らの意思で施設を出てしまったという。
※女性セブン2012年6月28日号