ローンや預貯金、光熱費にはじまる各種支払いなどを妻任せにしている夫は多い。しかし、彼女が倒れた途端、それら全てを夫が切り盛りしなければいけない。
松本方哉氏(56歳)は、『ニュースJAPAN』(フジテレビ)のキャスターだった。2007年晩秋、妻がくも膜下出血におかされたうえ、その後、卵巣の悪性腫瘍にまで見舞われ現在も闘病中だ。
松本氏は看病のため番組を離れ、生々しい体験を自著『突然、妻が倒れたら』(新潮社刊)に記している。
「職業柄、私は北朝鮮のミサイル基地の場所は知っていても、家のどこに貯金通帳とハンコがあって、いくら残高があるのかを知りませんでした。結局、わが家の預貯金を把握するのに丸2日かかりました」
ようやく通帳を探し出しても妻名義の場合、金融機関は本人の委任状がなければ預金額を教えてくれない。もちろん、委任状なしに口座の解約にも応じない。
「本人は意識不明なんだから委任状どころじゃない。妻が元気なうちに、万が一のため直筆のサインと捺印をした委任状を作成してもらうべきでした」
フォトジャーナリストの桃井和馬氏(50歳)も、妻がくも膜下出血で倒れた。彼女は必死の看病も虚しく10日後に逝去した。
「治療費や葬儀代、生活費など当面のお金が必要なので、郵便局で妻名義の口座を解約しようとしました」
その際、つい世間話の延長で妻の死を局員に告げた途端、事態が急変した。
「局員は『奥さんの死を知った以上、規則で解約できない』というんです。その後は、どれだけ事情を説明しても無駄。金融機関の人間には、余計なことをいわないほうがいいですよ」
死者の資産は遺産となるため、死亡届を提出すると金融機関の本人口座は順次凍結される。
※週刊ポスト2012年6月22日号