大阪市は来年1月をめどに、公立小中高の校長、教頭を除く全教員約1万2000人に業務用パソコンを配備することを決めた。
一般の会社員が聞けば、「今さら?」の感もある。だが文科省の調査によれば、大阪市の教員へのパソコン配備率は全国平均の99.2%を大きく下回る36.6%だというから驚きだ。
大阪市教委は数字の理由について、「学校の耐震化やエアコン設置など、優先課題が多く財源確保が困難だった」ことに加え、「現場の教員の“子供の大事な記録は手書きで心を込めて書きたい”という声に配慮してきたため」と説明する。
大事な記録とは、児童・生徒の「卒業証書授与台帳(※注)」や、成績や出欠を記録する「指導要録」を指す。市教委は、これらの文書は手書きを原則としてきた経緯がある。これを橋下市長が「無駄な労力だ」とバッサリと切り捨てた。
実際、無駄は多い。市内の30代の中学教諭の話。
「指導要録などは修正液での訂正もダメなので、一旦パソコンで下書きして清書します。出席番号も一桁の数字の判子を滲まないよう細心の注意を払いながら押すので、指導要録を作成する年度末は徹夜続きになる。日々の配付資料にしても、自宅のパソコンで作って学校の共有パソコンでプリントアウトする人が多い」
【※注】卒業証書授与台帳/卒業証書を授与した児童・生徒の氏名や通し番号を記入した帳簿
※週刊ポスト2012年6月22日号