親の介護はいつ来るかわからないものだが、いざ親の介護に直面したとき、家族が頼れる公的制度が“介護保険”だ。自己負担額1割で訪問介護や訪問看護などのサービスを利用できる。利用するには市区町村で要介護認定を受けて、「要支援1・2」「要介護1~5」のいずれかに認定される必要がある。
今年4月、介護保険法が改正されたが、改正後の柱は、「地域包括ケアシステム」。医療や介護などの生活支援サービスを、住み慣れた地域で、切れ目なく提供するというものだ。なかでも注目は「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」だ。
「特養(特別養護老人ホーム)など安い費用で24時間体制の介護が受けられる老人介護施設は順番待ちですぐにはいれず、かといって高額な有料老人ホームに親を入れる経済的余裕はないという家族が、自宅で介護できる態勢をサポートする目的があります」
と話すのは、『親の退院までにしなければならないこと』(すばる舎)の著者で介護・医療ジャーナリストの長岡美代さん。
一方、社会福祉士の宮下公美子さんは次のような指摘も。
「病院や施設への入所者を減らし、増大する介護・医療費を抑える狙いもあると思います。地域での支援態勢が万全でなければ、家族に介護の負担がより大きくなる可能性も」
「たんの吸引」や腹部に開けた穴から直接栄養を補給する「胃ろう」が一定の研修を受けた介護職員でも行えるようになったことも改正点。ただし、「本来は医師や看護師しか行えない行為。一定の研修といっても、ヘルパーさんにまかせていいのか、正直、疑問です。胃ろうが必要な家族がいる場合は注意したい」(長岡さん)という指摘も。
介護制度が“家族で行う”方向に向かういま、ひとりひとりが介護について“もっと知る”ことが重要になりそう。
相談に乗ってくれる機関には、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所がある。
前者は地域の高齢者の総合的な相談窓口で、介護保険の受付のほか、医療や介護、福祉など、さまざまな高齢者支援を行っている場所。市区町村によっては、「地域ケアプラザ」「あんしんすこやかセンター」などの名前がつけられている場合もある。
後者は、自宅で介護保険サービスを利用するにはケアマネジャーにケアプランを作成してもらう必要があるが、それを依頼する場所。地域に複数あり、利用者が自由に選べる。
※女性セブン2012年6月28日号