福岡県は発砲件数、指定暴力団数ともに全国1位。厳戒態勢下にある同県ではここ数年、暴力団抗争による被害が一般市民にも及び、昨年4月までの5年間で抗争に起因する市民を含む死亡者数は9人に達した。
そんな同県では「暴排先生」が活躍中だ。
県警が特別採用する暴力団排除教育専門の“教師”のことで、身分は福岡県臨時警察職員となる。任期は1年、大学・短大を卒業後3年以内の教員免許を持つ男女が対象で、昨年度は9人が「暴排先生」に採用された。今年度も同数程度採用予定で、県内の中学・高校約550校で、若者が暴力団に憧れたり、加入したりするのを阻止すべく講演を行なっている。昨年1年間で、県下で22万人を超える中高生が暴排先生の授業を受けた。
県民に広く知られているのが、ビデオ『許されざる者』だ。福岡県警が、実際の事件をもとに“暴力団の本当の姿”を暴いた自主制作ドラマである。
ストーリーは単純だ。ヒットマンに命じられた暴力団組員が発砲事件を起こすも失敗(流れ弾が市民に当たる)。逮捕後、組織の関与を供述したため、家族ともども命を狙われる――という末端ヤクザの転落を描いた力作。出演はすべて県警の現役警察官だが、ヤクザ役を演じる警官の風貌や演技がコワイことコワイこと! 「ドキュメンタリー」と勘違いしている地元住民もいるほどだ。
ドラマ中、ヤクザが乗る車のナンバーは「893」や「1893」というこだわりようで、制作スタッフの意気込みが伝わってくる。県警HPでは1分間のダイジェスト版のみを公開しているが、県内約150店舗のレンタルビデオ店で無料貸し出しされており、なかなかレンタルできないほど人気を博している。
※週刊ポスト2012年6月22日号