「きんは100シャア、ぎんも100シャア」――そんな名セリフで日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。あれから20年が経ち、ぎんさんの4人の娘たちもいまや平均年齢93才、母親譲りのご長寿だ。
朝起きたら、とりあえずテレビをつける。ひとり暮らしの高齢者の中には、そんなかたも多いのではないだろうか。このとき、ただ漫然と見るのではなく、自分が見たい番組を見るという意識でいると、受け取るものも違ってくる。千多代さん(三女・94才)がテレビの前に座って、目が釘付けになるのが国会中継だ。
千多代さん:「あんなおもしろいものはないがね。ああ、この総理大臣は、国民のために腹をくくっとらんなとか、ああ、この大臣は、私より頭が足りんなとか、いろいろ考えさせられて、ヘタなドラマよりも面白いだがね(笑い)」
国会中継を見ることは、千多代さんにとって趣味であり、頭を柔軟にしてくれる、格好の時間だという。
千多代さん:「ときどきな、あの程度なら、私も選挙に出てなあ、国会議員になってみようかと、ほんと、真面目に思うときあるよ(笑い)」
2011年8月、白内障の手術を受けた長女・年子さん(98才)は、視力が大幅に回復した。なんと、針の穴に糸を通すのも、眼鏡なしで難なくやってのける。
千多代さん:「あんねぇはね、新聞を眼鏡なしで根こそぎ読むだよ。もう、隅から隅まで一日中、読んでるときあるよ」
年子さん:「これは、お金のかからない私の趣味。頭の体操になるがね」
そんな年子さんは、読めない漢字や難解な言語があると、漢和辞典や国語辞典を引っ張り出して、とことん調べないと気がすまない。
年子さん:「そうせんとな、消化不良になって、夜、眠れなくなるだが(笑い)」
一方、四女・百合子さん(91才)も、よく新聞を読む。毎朝、直径10cmの虫めがねをかざして読むのが朝日新聞の『天声人語』。これを大きな声を出して読み上げる。
百合子さん:「私と猫のほか、誰もおらんでしょ。大声出しても迷惑かけんからね。だってね、黙って読んでると、気が滅入るがね。それにな、大きな声を出すと、気持ちがひとりでにシャンとなるよ」
だが、ひとり暮らしの楽しさを味わっていても、ときどき百合子さんは、ふっと寂しさを感じることがある。そんなとき、百合子さんが思い出すのは、在りし日の母・ぎんさんのこんな言葉だ。
<悲しいことは、考えんほうがええ。楽しいことを夢見ることだよ>
※女性セブン2012年6月28日号