野田佳彦総理は消費増税に対し「政治生命を賭ける」と語り、増税に意気込みを見せたが、そもそも消費税増税について民主党は2009年の衆院選のマニフェストで何といっていたのか。政治学、行政学専門の後房雄・名古屋大学教授に話を聞いた。
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政権負託後、「行政改革」の名のもとに公金支出の無駄を省き、16.8兆円の財源を捻出する――これが政権交代選挙で民主党が掲げたマニフェストです。この徹底的な無駄の洗い出し作業に4年間を要するから、“その間は消費税は上げません”と彼らは約束した。
マニフェストは国民が政権を選ぶ最大の根拠ですから、政党がマニフェストに縛られるのは当然。守らないというのなら国民は何を信じていいかわからない。簡単に反故にできるものではありません。
国民が納得できる正当な理由があれば、変更も認められます。民主党側が「これだけ行政改革を徹底したが、10兆円分しか財源を捻出できなかった。残り6兆円分を消費増税で賄わせてほしい」と丁寧に国民に説明していたら話は別です。
ところが、いま民主党がやっているのは16兆円どころか、1兆円程度の無駄削減で行革を放り出し、いきなり消費税を上げると宣言した。これはマニフェスト違反であって、国民をだまして票を買ったに等しく、詐欺行為という他ありません。
橋下徹・大阪市長率いる大阪維新の会に支持が集まっています。これは民主党が放り投げた既存の権力構造を変える行政改革への期待を、国民が維新の会に横滑りで託したためと考えられる。つまり、民主党マニフェストに対する国民の支持はいまだ衰えておらず、民主党はまだ放棄してはならないということです。
※週刊ポスト2012年6月29日号