料理教室の生徒を多数かかえ、テレビや雑誌に引っ張りだこの“登紀子ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(88才)。そんな鈴木さんが、夏の味覚の代表的食材である“茄子”のおいしい食べ方を紹介する。
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南のほうから順番に、梅雨入りの知らせがはいる季節となりました。6月、水無月。無は「の」と読み、文字通り「水の月」の到来です。年々暑くなる時期が早まっているせいでしょうか、夏野菜も駆け足で出回り始めました。ばぁばも負けじと早足でまいりましょう。
まずはお茄子。いまでは一年中手にはいりますが、つやつやと張りのある鮮やかな紫紺色(茄子紺)は、露地ものならでは。昔は朝露を含んだとれとれは漬けものに、あるいは薄甘く煮てキンと冷やし、お昼のお膳に出したりしたものです。
また、お茄子は油ととくに仲良しですから精進揚げにしたり、香ばしくしぎ焼き(茄子に油を塗って焼き、練りみそをつけて焼いたもの)もおなじみでした。いまでも夏の夕暮れに、しぎ焼きに使ったごま油の香りがどこからかほのかに漂ってきたりしますと、なんともいえない郷愁を感じます。
そして、夏といえば焼き茄子。いつでしたか、焼き網が見つからず、試しに金串を打って直火で焼いたところ、なんときれいに焼けておいしいこと! 以来、この方法で焼いております。
茄子は洗わずに固く絞った濡れ布巾で拭き、へたの下を包丁でくるりと切り取ります。金串2本を打って直火にかざし、上、横、ひっくり返してと焼いて、すぐに氷水に放して、手早く皮をむきます。
真っ黒になった皮の下に潜む瑞々しい翡翠色の実を、しょうがじょうゆでいただきますと、梅雨の鬱陶しさも吹き飛びますわね。
「茄子の刺身風」も、おすすめの一品です。茄子を丸のままゆで、重しをのせて水けを切り、刺身のように4~5mmに切ってよく冷やします。きゅうりやみょうが、わかめ、青じそ、さらしねぎなどを薬味風にたっぷり添えて、辛子じょうゆでいただきます。作りおきにも最適ですよ。
※女性セブン2012年6月28日号