6月27日に予定される関西電力の株主総会に大阪市の橋下徹市長が出席する。大阪市は関電株の約9%を保有する筆頭株主。橋下氏は10項目の株主提案を行なった4月の段階で「会場に行く」と、自ら総会に出席することを明言した。
総会への“殴り込み”には、「速やかな原発の廃止」などのほか橋下氏の別の狙いも潜んでいるという。市役所幹部はこう語る。
「大飯再稼働ばかりが注目されているために見過ごされているが、株主提案の中で、市長が“絶対に入れろ”と求めていたのが、公務員天下り問題です」
大阪市の10項目提案には、「公務員の再就職受け入れ禁止」「取締役報酬の個別開示」などが盛り込まれている。
現在も関電の非常勤監査役を市の元財政局長が務め、同ポストは市幹部の“天下り指定席”とされてきた歴史がある。関電の事業報告書によれば、月4日ほどの勤務の非常勤社外監査役4人に対する年間の報酬支払額は3300万円で、1人平均では825万円だ。
だが、大阪市が再三にわたって天下り監査役の報酬の開示を求めても、関電は「総額を公表すれば十分。適法に処理している」と拒否してきた。大阪維新の会関係者はこう指摘する。
「昨年の市長選で関電は(対立候補の)平松邦夫氏の支援に回り、市役所労組などとともに橋下潰しの中心勢力となった。関電とのパイプはまさに役人特権であると橋下さんは見なしており、そのパイプを完全に断つつもりでいる。
関電株主の多くは、株価を下げる可能性がある“脱原発”には賛成しない。が、無駄な天下りの受け入れ禁止は株主にとってメリットがある話だ。天下り問題で経営陣を追い詰めれば、会場の空気は盛り上がる」
そもそも公務員改革は大阪都構想と並ぶ橋下政策の“一丁目一番地”だ。本番では論点を原発問題から天下り問題にシフトする可能性は十分にあるだろう。
昨年の関電株主総会は、福島第一原発事故の影響もあり、過去最長の4時間51分に及んだ。しかし、今年は「議案が30件と多く、しかもその多くが橋下市長絡み。昨年以上に長引くのは間違いない」(在阪の全国紙経済部記者)と予想されている。
市環境施策課は「公務もあるので、提案趣旨を説明したら途中退席すると思いますが、そこは市長次第としかいいようがない」と説明する。関電側の説明に橋下氏が納得しなければ、延々と議論を闘わせる展開は十分に考えられる。
※週刊ポスト2012年6月29日号